『知らない映画のサントラを聴く』 読みやすいけど共感は出来なかった

竹宮ゆゆこさんの作品を読むのは久しぶり。『とらドラ!』以来かしら。

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著書『ゴールデンタイム』のアニメが、全体的には好きだったので購入。
『とらドラ!』は数巻読んだのですが、何だか続きを買う気になれなかったので断念していたかしら。

とにかく読みやすくて、テンポよく読み進められるのですが、どこか読了感が良くなくて。

文章が好みではないが残念

徹底的に読みやすく、ただその物語を消費できる。けど、それ以上ではないというのが感想です。
物語そのものはそこまでつまらなくないが、人間心理の動向に対して共感がそれほど出来ないんです。
やっていることが狂人的なのに狂気を感じない、という感じでしょうか。

実はつい先日、シンクに落として割ってしまったのだが、心の中の松岡修造が「割れたからって諦めるのか!? アロンアルファで貼ってみろよ! ダメダメダメダメダメ、諦めるな!」と熱く騒いだので、破片を集めて接着してみた。そんなこんなで、満身創痍になってもなお、こいつだけが本来の用途で使い続けられている。
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「心の中の松岡修造」って、ねぇ……。
事程左様に、こういう表現が出てくる人なんです。

個性ではあるんだけど、”読む快感”を感じるタイプの作家さんではないんだなぁ。

じん、と頭の奥に不思議な汁が分泌されたのを感じた。  脳が痺れたようになって、枇杷はゆっくりと獣じみた中腰に身を起こす。いきなり体重を半分にしてもらえるボーナスステージに投下されたような気がする。ふわっと宙から吊り上げられたように、今、身体がものすごく軽いのだ。
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ボーナスステージ、っていう言い方も……好みじゃないかな。

知らない映画のサントラを聴く 表紙

乱歩ならこの狂気をどう描くか

この物語の登場人物に、別れた彼女が死んでしまい別れたことを後悔するあまりにその娘のセーラー服を着て夜出歩く男が出てくるのですが、その行動の奇天烈さの反面、狂気をあまり感じません。

彼はその一点を除けば真人間なのですが、その設定に無理を感じました。
とどのつまり、その落差にあまり共感を覚えられなかったのです。
登場人物の行動が、どうにも引っかかる。すると、フィクションが想像力を刺激しなくなる。

極論、狂気的行動の答えなんて無くてもいいんです。けれど、フィクションが想像力を刺激しないなら文章はただの文字列になります。

乱歩ならどう書くか。女装して元カノの面影を追い続ける男を。
背徳感も薄く、狂気も薄く、それ以外の点で真人間のように立ち振る舞い続けることを是とするでしょうか。

次回に期待かな

スイスイ読めて、それなりに楽しかったけど、それにプラスαが欲しかったってぇ感じですかね。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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