『消された一家 北九州・連続監禁殺人事件』 史上最悪レベルのサイコパスの、ノンフィクションはこちらですよ

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壮絶な本。これ読んじゃうと下手なミステリは読めなくなりますな。
事実は小説より怖く、実在の人間は架空の人間よりも弱くて脆い。

七人もの人間が次々に殺されながら、一人の少女が警察に保護されるまで、その事件は闇の中に沈んでいた──。明るい人柄と巧みな弁舌で他人の家庭に入り込み、一家全員を監禁虐待によって奴隷同然にし、さらには恐怖感から家族同士を殺し合わせる。まさに鬼畜の所業を為した天才殺人鬼・松永太。人を喰らい続けた男の半生と戦慄すべき凶行の全貌を徹底取材。渾身の犯罪ノンフィクション。

史上最悪、と言われる類の事件です。
この松永という男の悪魔性は半端じゃない。
サイコパスというのはこういう男のことをいうんでしょう。

マンションの一室に男性とその娘を監禁し、多額の金を巻き上げると同時に、通電や食事・睡眠・排泄制限などの虐待を加えた。やがて家畜のごとく、男性を衰弱死させた。その後、今度は七人家族を同じ部屋に監禁し、やはり通電やさまざまな制限を加え、奴隷のごとく扱った。  七人家族とは、その男の内縁の妻、妻の父親、母親、妹夫婦、甥、姪だった。  そして――。  男は、家族同士の殺し合いを命じた。まったく抵抗も逃走もせず、一家はその指示に従い、一人また一人と殺し合いで数を減らしていった。遺体はバラバラに解体された。男はまるでチェスの駒を進めるかのように、その都度、殺す者と殺される者を指示するだけで、自らの手はまったく汚さなかった。
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正確には殺し合いを命じたのではなく、殺し合いをするように誘導した、という表現が正しいのでは。
しかも、おのれの手を汚すこと無く。

この辺りの人心掌握の術、詭弁の軽さ、頭の回転、ギアの切り替え方、徹底的な人格誘導と欠落した倫理観。
恐ろしいことに、読めば読むほどこの松永という男に興味が湧くのです。
もちろん、「これだけのことをしでかす野郎というのはどんな人間だろう」というスケベ根性ではありますが。

「私はこれまでに起こったことは全て、他人のせいにしてきました。私自身は手を下さないのです。なぜなら、決断をすると責任を取らされます。仮に計画がうまくいっても、成功というのは長続きするものではありません。私の人生のポリシーに、『自分が責任を取らされる』というのはないのです。(中略)私は提案と助言だけをして、旨味を食い尽くしてきました。責任を問われる事態になっても私は決断をしていないので責任を取らされないですし、もし取らされそうになったらトンズラすれば良いのです。常に展開に応じて起承転結を考えていました。『人を使うことで責任をとらなくて良い』ので、一石二鳥なんです」
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もっとも、松永は「金を払え!」「金を作ってこい!」と恫喝するような単純な方法はとらなかった。「松永は金を払わないことを通電の理由にはしません。『これはお金を作ってこいと言っているんだな』と思わせるような、遠まわしな物言いをして通電を繰り返しました」と、純子は言っている。相手を誘導して、最終的な決断はかならず本人に下させ、自分は責任を取らない。松永のポリシーは、虐待をするときにおいても、徹底して貫かれていた。
at location 1132

まさに外道。下衆。これが下衆の極みです。
不倫くらいじゃ下衆の極みとはいえないのです。別に言われんでもいいでしょうが。

実は、この事件のことを、あたくしは全く知らなかったのです。
報道規制が凄かったらしいのですが、起こったのは2002年。あたくしは18かな。物心も十分ついてます。
それでも知らなかった。受験で忙しかったからかしら。

とにかくこの犯人の鬼畜っぷり、サイコパスっぷりが常軌を逸していて、狂っているとしかいいようがなく、それが皮肉なことにこの本を面白くしているのです。
面白い、というのが正直な感想。悲劇、というように芝居と同じような言い方をするのが気が引けるほどに残虐な話なのに、どんどん興味が湧いてきてページをめくる手が止まらないのです。

これも人間の業でしょうか。
かわいい業だなぁと思いますよ、この本読んだ後じゃ。

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都内在住のおじさん。 2児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』
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