『漫画貧乏』 漫画家という憧れをリアルに語る

漫画家って儲からないんだな

才能や体力を削りに削った対価なんだから、もうちょっと儲かってもいいような気もするんですが

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佐藤秀峰さん、『ブラックジャックによろしく』や『海猿』の漫画家さんですよね。
えらく緻密で念入りな下調べをして書く、丁寧な漫画家さんだなぁとは思っていましたが、まさか実情がこんなんだとは。

海上保安官の活躍、医者の裏側、特攻隊の話。
どれも念入りな取材なしには描けません。
その取材力と、体力、画力にはどれにも脱帽です。ほんと、ハンパねぇ。

漫画ってもっと簡単にかけるんだと思ってました。
いや、かけるものもあるんでしょうけどね。
のび太が言ってたよ。「そうだ漫画家になろう」ってね。
「机の前に座って馬鹿なこと書いてりゃいいんだから」ってね。

とんでもないじゃないの。

そもそも儲からないとかいうレベルの話じゃない

儲かるとか儲からないとかそういうんじゃなくて。
生きていけないじゃない、一日18時間以上労働ですよ。ほんと、死ぬ。死ねる。
あたくしなんざ8時間労働でひーひー言ってるのに。
それは根性なしか。

憧れの印税だって、そんなに簡単なものじゃないらしいですな。
佐藤さんの計算によると、1冊10万分売れる漫画家でも、年に4冊出して年収1000万円なんだとか。
サラリーマンがいかに「普通にやっていればもらえる」仕事かが分かりますな。
サラリーマンでよかった。ほんと。

また、1万部の作家と100万部の作家で、印税率は一緒だということ。
この辺りは佐藤さんの書き方に随分と悪意があるな、と思ったのですが、曰く「一万部打っても100万部打っても、作家には1円も還元されない」とのこと。
印税率が変わらないだけで、印税は変わるだろ、と思うのですが、とにかくそこに全く納得していないんだそう。

「才能がある人の努力こそ価値がある」というのがすべてではありませんが、佐藤さんのおっしゃる通り、「職業に貴賎はありませんが、仕事への評価は適正になされるべき」だとも思います。

自分のような凡才でも、天才の方々の半分以上はいただけているわけですから、なんと言っていいものかしら。
それだけ才能の世界で生きていくのは難しい、ということですかね。
早めにその世界から降りて良かった、とつくづく思いますな。

とにかく、筆の端々から、この佐藤秀峰という人間が自分の正義を信じていて、敵に回すと厄介なタイプであるかがゾクゾクするほど分かる本でした。面白かった。