鈴木保奈美さんの番組で激推だったので、それじゃってんで購入。
「そもそものはじまりは間違い電話だった」。深夜の電話をきっかけに主人公は私立探偵になり、ニューヨークの街の迷路へ入りこんでゆく。探偵小説を思わせる構成と透明感あふれる音楽的な文章、そして意表をつく鮮やかな物語展開――。この作品で一躍脚光を浴びた現代アメリカ文学の旗手の記念すべき小説第一作。オースター翻訳の第一人者・柴田元幸氏による新訳、待望の文庫化!
意表はつくかもしれませんが、そこに何らかの魅力を感じるかと言われると、……という印象。どちらかというと主人公の統合失調症を疑うような。
3
位置: 585
「スティルマンが解放されるというのは本当ですか?」
「明日です。夕方にグランドセントラル駅に着きます」
そこはかとない、独り相撲感。
6
位置: 925
こうした一連の話が、新世界といったいどう関係があるのか、クインには見当もつかなかった。だがやがて新しい章がはじまり、今度は一転して、ヘンリー・ダークなる、ボストンの聖職者の生涯が論じられていた。
こういうサイドストーリーが面白いのは評価できる。村上春樹に通じる、妙にリアルで興味深いフィクション内論考。
訳者あとがき
位置: 2,695
探偵小説が伝統的に満たしてきた条件が、この小説でも満たされるものと期待して読むなら、たしかにこれほど奇怪な「探偵小説」はない。事実はいっこうに明らかにならないし、「探偵」は何ひとつ解決しない。「探偵」の行動に表面的な意味での一貫性はなく、むしろどんどん理不尽になっていく。
そうそう、まだあたくしはこの段階で戸惑っています。まだまだ型どおりの探偵小説が読みたいんでね。
独り相撲感を感じながら、あれよあれよと読み、気がつけば読了して、「なんだったんだこれは」という後味。これを「新しい!」と思えるかどうかは同時代性によるんじゃないかな。これが「古典」になってから読んだ身としては、「オモッテタントチガウ」という印象。