個人的には「だったらその引き、意味ないじゃん」と思う。
幼(いとけな)き麒麟に迫り来る決断の時──神獣である麒麟が王を選び玉座に据える十二国。その一つ戴国(たいこく)麒麟の泰麒(たいき)は、天地を揺るがす〈蝕(しょく)〉で蓬莱(ほうらい)に流され、人の子として育った。十年の時を経て故国(くに)へと戻されるも、役割を理解できぬ麒麟の葛藤が始まる。我こそはと名乗りを挙げる者たちを前に、この国の命運を担うべき「王」を選ぶことはできるのだろうか。
王選びの話、といえばざっくりし過ぎかな。でも、とどのつまり、ただそれだけがテーマで丸々一巻使われてる。蓬莱、つまり日本から転生してきた若い男が麒麟となり、王を選ぶ。その際のすったもんだの話です。
p273
(では……驍宗殿は確実に奥ではない)
王を選ぶ、というのがどういうことなのか、読者も主人公である泰麒もよく分からない。五里霧中のまま物語が始まります。んで、途中、泰麒が確信するシーン。
読者も信じるしかないじゃない。あぁ、驍宗は違うんだな、と。
ただ、結果は王になりました。
p353
「ぼくは、取り返しのつかないことをしました」
景麒は無言で続く言葉を待つ
「これほどの裏切りはありません」
小さな麒麟は眼を上げた。必死の色が浮かんでいた。
「……王には……天啓がなかったのです」
愕然とした。
それは景気の想像を遥かに超えた告白だった。
「天啓が……ない?」
泰麒は頷く。
「何の啓示もありませんでした。王騎も見えませんでした。ぼくは一度、御無事で、と申し上げましたーーー」
「……なぜ」
「ぼくはただ……驍宗さまがお帰りになるのが嫌だったんです」
面白く読まされました。そう、偽りの王選びだった。これはいい引きです。読ませた。ただ、ね。
p366
「麒麟は天意の器に過ぎません。かえして言えば、麒麟に意思などありはしない。ただ天の意志が、通り抜けていくだけ」
結果論じゃん!と思いますね。
だったら偽りの王とはなんぞや。確か、慶国はそれで失道してたんじゃなかった?
シリーズ屈指の名作、と言われているらしいですが、どうもあたくしは乗り切れず。