ここでも書きましたし、どっかでも聞き及んだんですよね。2回聞き及んだ本は買うべき。だから積読してあったのを、ようやく読めました。
北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か? 異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。
こうやってちょっとずつでも消化していかないとね。
人並みだけど世界観だよね。なんとも言えない不思議な、だけど読み応えや共感もある。「SFを読んでいる」という充実感がたっぷり味わえる。これぞ醍醐味ですよね。淡々としていながら、深い余韻が味わえました。
ラゴスはいつも旅を続けます。一箇所にとどまっていられない。奴隷になったり、知識をもとめてシェルターに引きこもったりするけれど、ある程度で旅に戻る。「人生とは旅だ」みたいなありきたりなフレーズが思い浮かびますが、まさにそれを一冊かけて味わわせてくれました。
王国への道
位置: 1,518
四カ月後、おれは歴史と伝記に読み耽っていた。年代を追って史書を読み、各時代への理解を深めるため、それぞれの時代における重要人物の伝記はその時代の歴史に並行して読むという方法が、なんとぜいたくな、そして愉悦に満ちたものであったかは、かくも大量の書物に取り囲まれているおれにしかわからず、実際おれにしか体験できぬものであったろう。それはまた歴史理解の最も効果的な方法であったとおれは確信している。それにしてもかの星における歴史は長く、複雑でもあった。いつ読み終えるかしれぬそれらの歴史をおれは散歩する暇さえ惜しんで読み続けた。といっても、 焦躁 とは無縁だった。かくも 厖大 な歴史の時間に比べればおれの一生の時間など 焦ろうが怠けようがどうせ微微たるものに過ぎないことが、おれにはわかってきたからである。人間はただその一生のうち、自分に最も適していて最もやりたいと思うことに可能な限りの時間を 充てさえすればそれでいい 筈 だ。
読者に読書について問う、素晴らしい文章であります。立身出世のための読書ではなく、それ自体が目的である読書。かくあるべし。
人物の伝記を歴史に並行して読む、というのはとても立体的な理解になるよね。歴史の勉強の時にすごく有効。
奴隷商人
位置: 2,195
腹立ちはやがておさまった。こういう連中に腹を立ててもしかたがない。身の安全をはかろうとするには、怒りが邪魔になる。
怒りの感情は邪魔、というのもまた至言。よくあるよね。平和な現代でもある。あたくしは理解していながらつい怒りの感情に飲み込まれる。幼稚である自覚はある。
氷の女王
位置: 2,787
このキテロ市に、わたしは帰郷したのではなかった。実は旅の途中に寄っただけに過ぎなかったのだ。旅をすることによって人生というもうひとつの旅がはっきりと見えはじめ、そこより立ち去る時期が自覚できるようになったのであろうか。
またいい言葉だ。旅をすることによって人生というもう一つの旅が見える。これがこの本の答えなのかもしれません。ラゴスだけじゃなく、みんな旅人なんだよ、ということね。言葉に直すと陳腐だけど。