奥田英朗著『野球の国』感想 野球というのはこういう人にも愛されるのだ

地方球場が好き、という人、多いんじゃないかな。

「一人旅は思いがけず楽しかった。/アローンだがロンリーではなかった。一人でどこにでも行けた」この小説家に必要なもの、それはーー野球場、映画館、マッサージ、うどん、ラーメン、ビール、編集者、CPカンパニーの服……そして旅。沖縄へ、四国へ、台湾へ。 地方球場を訪ね、ファームの試合や消化試合を巡るトホホでワンダフルな一人旅。珠玉の紀行エッセイ。

あたくしも、地方球場が好き。長良川球場とか、鎌ケ谷とか、今度できたジャイアンツのホームタウンも行きました。それはきっと野球に限らず、サッカーでもラグビーでも何でもいいんですよね。ただ単に地方球場が好きなんです。旅行でついでにふらっと寄れたら最高。

だから、本著を読んだら絶対に好きになる!と思ったんですけどね。奥田さんという人があまり好きになれない。

位置: 369

地下の日本食レストランが空いていたので、そこで焼魚定食を食べる。ただし、運悪く、うしろのテーブルは小さな子供連れの四人家族。ビービーうるさい。
 昨夜から客層ははっきりと低下している。わたしがもっとも嫌う膝までのショートパンツを 穿いたニイチャンたちが、汚いすね毛を丸出しで廊下を歩いているのを見ると、かなりげんなりする。

子連れで外食いいじゃないの。ショートパンツは駄目なのか。この奥田という老人に、あたくしは初っ端から反感を覚えてしまいました。ドレスコードのある場所でないなら、子連れだろうが短パンだろうが、認められるべきではないか。

一言で言って老害である。

位置: 383

読谷球場は、実に素晴らしいところだった。
 一面がサトウキビ畑のなだらかな丘を登っていくと、稜線の向こうに、森が徐々に姿を現してくる。ああ、あの中に野球場があるのか――。そう思っただけで、じんときた。丘の上の野球場。なんて素晴らしいのだろう。丘の上に何を建てるかで、町の民度がわかる気がする。

そうなんだよ。「この先に野球場がある」と思うだけでじんとくるんだ。丘の上の野球場、素晴らしい。

位置: 669

目が覚めたら練習は終了していた。若手がマシン相手に居残り特打をやっている。観客はもうまばら。スコアボードの時計を見る。午後三時だった。一時間以上、寝た計算だ。
 えもいわれぬ充足感を覚える。熟睡の余韻を噛みしめるように、しばらく横になったままでいた。
 青い空、乾いた空気、そよ風、緑の芝生、そして野球場! もしかして、我が人生で三本の指に入る昼寝なのではないだろうか。そんな感慨すら湧いてきた。

手に取るようにその感動が伝わってくる。沖縄いいよね。野球場で昼寝、最高だね。

しかし、どうしてそのような素敵なことが理解できる人に、冒頭のような老害ムーヴが行えるのか、人間とは不思議なものだ。

位置: 762

係の人に「坊っちゃんの間も見ていってくださいな」と言われ、端の六畳間をのぞく。そういえばわたしも作家だったのだ。自覚、ないなあ。わたしは文学に傾倒したことも、ミステリーにはまったこともない。読書量はきっと最低レベルだ。それで作家になったのだから、小説家志望の方々には腹立たしいだろう。
 でもね、言っておくよ。小説家はなりたくてなるものではない。それしか生きていく 術 のない人間がなるものだ。流れ着いた先の孤島なのだ。なんて、エラソーに。

一応「このミス」も受賞している人なんだけどね。確かにWikipediaによるとプランナーや構成作家出身のようだ。こういう小説家のなり方もあるもんだな。行き着いてみたいものだ、その島に。

位置: 1,170

 弱った。あんまりおいしく感じない。
 スープを飲んでも、肉を口に入れても同じだった。
 小さく吐息をつく。そんな気もしていた。
 二十代の後半、立て続けに香港に通った時期がある。東南アジアの猥雑なエネルギーに、魅せられたのだ。わざわざ安いホテルに泊まり、安い食堂で胃袋を満たした。わたしにとって、それは小さな冒険だった。いんちきな英語と広東語でずんずん奥へと進んだ。九龍城にも行った。船上生活者の船にも乗った。なんでも、口に入れてみた。空腹だから、たいていのものは旨かった。まずかったとしても、面白がれた。異国に恋するとは、そういうことだ。
  翻って、今のわたしにその素地はない。ホテルはLグレード以上を探す。ジャケットを着用するのは、レストランでよい席に通されたいからだ。そこは世界共通の場で、「異国」はない。
 わたしの側に、変化があった。青春は、遠い日なのだ。

まだ、あたくしは異国のまずい料理を楽しめるマインド・肉体ではある。ホテルは安くて良い。まだ青春が続いているのかもしれない。嬉しい……のか?喜んで良いのかな。まだ老成していないということではあるか。

位置: 1,880

ここでポップコーンの封を切り、一握り分を空に撒いた。
 ミャーミャーミャー。一斉に海鳥が集まってきた。おお、わが友たちよ。わたしは天王洲でも、ときどきカモメに餌をやって遊んでいるのです。

鳥の餌付けっていいんだっけ?まぁ、観光地で売ってたりもするし、いいのかな。こういう無邪気な遊びが何かしらの新しい害を生んでいないか、ハラハラしちゃうんだよね。小市民的というか、小物というか。だからあんまり野生と接さない。これって本当にいいことなのかしらね。

位置: 2,497

 わたしは、心とストライクゾーンがとても狭い人間である。神経に障ることがいっぱいある。繊細と言いたいところだが、たぶん狭量なのだろう。

これはあたくしも非常に近い自意識を持っています。分かっている分まだマシになろうとしている。先程も筆者の狭量なところをあげつらいましたが、まぁ、それも人間かもね。分かっている分まだマシよね。

投稿者 写楽斎ジョニー

都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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