平山夢明著『他人事』感想 胸糞なクセ強の短編集

二作くらい読めばお腹いっぱいになること請け合い。

まじで胸糞なんですよ。ただ、これがクセになる美味さだと感じる人もいるでしょうね。
あまり多くを語るべき作品ではないのかもしれませんが、とにかくクセ強で、刺さる人には刺さるんでしょう。しかし、この著者はどんな変態さんなんだろう。

他人事

位置: 126

『動けない動けないって、車で事故って子供を散らばすのがそんなに偉いことですか? そんなに 威張ることですか? 第一、あんたらが勝手に好きで落ちたんじゃないか。俺がおたくのハンドル握ってたわけじゃない』

ピンチにやたらと不遜になる人間の滑稽さを浮き彫りにする本作。男の正論ぷりが小気味良く感じる時すらあります。

倅解体

位置: 492

「それと本当に生きてるんだろうな、その娘」
「生きてるでしょう。昨日、汚れた生理用品がゴミに出てたから……。買い置きしてるの」
「なんてことだ」私は旅行 鞄 を 摑 むと出勤した。

まじで、倅を持つ身としては悪夢でしかない。胸糞作品に違いないです。終わり方の唐突さといい、本当にただ気持ち悪くさせようとしているとしか思えない。反吐を出しながら読書。

たったひとくちで……

位置: 743

た。「私の娘もあいつに食われたのです! あの犯人に! それを忘れるな! 忘れるなよ!」男は突然、糸を断たれたように床に倒れ、動かなくなった。目は開いたままだった。

おふくろと歯車

位置: 955

 既に頭髪のあらかたは抜け、皮膚が破れ障子のように浮いていた。全体が膿み腐れていたが臓器汁が腹の穴から絶えず排出し続けるおかげで巨人のように膨らむことだけはないように思われた。左目は午前中のうちに 干 涸 びた 茸 のように 眼窩 の奥に引っ込んだ。

どういう目的でこの文章を書いたんだろう。読者は必ず一度は筆者の健康状態を心配しますよね。何がしたくてこれだけの筆を振るうのだろうか。

しかしこのチャコとの話は終わり方が秀逸なんだよね。切ない。

仔猫と天然ガス

位置: 1,206

「フォールする?」引き攣れが胸を大きく上下させている天然ガスに訊ねた。
「こんなのに? 厭だよ。気持ち悪い」

てめぇがやったんだろ、と言いたくなります。しかし、それも筆者の思う壺。ぐぬぬ。

定年忌

位置: 1,307

 ……これが定年なんだ。イノヤマは自分の読みの甘さを悔やんだ。昨日まで忠実で友好的だった彼らの姿は今日の、このためのカモフラージュだったのだと気づいた。

なんとなく赤塚不二夫とかの昔のマンガの読み切りを思い出します。そのテイストを平山が書くとこうなる、ってね。昭和の時代なら何となくリアリティとかもあったのかもしれない。

位置: 1,363

「しかし、老人自立支援促進法ってのは国庫金の節約のためとはいえ奇妙な制度だ。

皮肉だね。しかしそういう社会が来るかもしれない(来ないと願ってます!)。この老人自立支援促進法ってネーミングもいい。

恐怖症召喚

位置: 1,601

「ちがう。こいつはこいつのフォビア。下葉は下葉のフォビア」
「ふぉびあ?」
「フォビア。こわいもの。針が怖い、高いとこ怖い、水が怖い、狭いとこ怖い、 蜘蛛 が怖い、いろいろ。ニーニャは人をそこへ落とす」

恐ろしい能力。こういうの、よく思いつくよね。筆者のネタ探しに同行してみたい。意外と饅頭こわいだったりするのかな。

れざれはおそろしい

位置: 2,462

 私はその理由をこれから一生かけて探していかなければならなくなったようです。

あたくしはこれが一番好き。なぜなら理不尽さが薄いから。他のは理不尽ばかりで不得意なのよ。そういう人が平山を読むなって話なんだけど。

ダーウィンとべとなむの西瓜

位置: 2,829

「なんてこった」
「医者は全員、爺様放り出して院内の患者を根こそぎ屋外待避させてから爆弾処理班を呼んだんだよ。爺様は信管を抜かれる間中、悪態をつき続けたらしい。おまけに砲弾を抜いた後からはとんでもない爆破物が処理班に襲いかかったらしいぜ」

アメリカのスラムでの会話みたいな話。なんともいえない味わい。こういうのも書けるのね、というのと、でもやっぱりこういう結末になるのね、の二種類の気持ちが入り混じります。

人間失格

位置: 3,023

「いや。僕にはこの場所でなければという必然がある。君にはそれがなさそうだ。それに僕には君の死ぬ理由が見あたらない。本当にあるのか? そんなものが。ヒステリーや安っぽい 嫉妬 ではない誰もが耳を傾けるに足る理由が」

これもなかなか面白かった。暴力は出てこなかったかな、珍しく。自殺しそうな女と自殺したい男の話。胸糞悪いのは一緒なんだけど、ところどころ目を見張るようなことも言っていたりするから面白い。

虎の肉球は消音器

位置: 3,212

 プレスの台座をよく見ると【正一】って傷が入ってるんだって。 「潰された工員の数さ。だからそのプレス機はショーイチって呼ばれてるんだ」オカやんは、たまにやってると言っていた。

ショーイチ、しかし面白い設定をつくるよなー。どっかの実話なのかな。それがプレス機の愛称になるのなんて、また格別に皮肉が聞いていて面白い。そしてラストのあっさり感も、これはまた良い。コース料理の最後に漬物が出てきた、みたい。

それにしても、胸糞の悪い短編集。また読みたくなるかも。

投稿者 写楽斎ジョニー

都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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