SFってこういうのよね、の最高傑作
虐殺器官よりも王道感は強いです。
伝統的なSFとして、『ブレードランナー』とか『時計じかけのオレンジ』とか、もっと言うとウェルズとか。これらの延長にあるゼロ年代の傑作ですよね。
貴志祐介氏の『新世界より』の次に日本SF大賞に選ばれたのも納得。素晴らしい出来です。
伊藤計劃氏がすごいなぁと思うのは、その文章がやたらとハイコンテキストなのに、不思議と読むスピードを落とさずに読み進められること。
ハイコンテキストであることがSFの宿命みたいになっていますが、あまりに読者を置いてきぼりなのは考えもの。
その点、彼の文章はスッと胸の中に落ちます。
ディストピアって最高
現実になってほしくはないですがね。
でも未来観として、どうしようもなく好き。
映画『ウォーリー』もそうですが、どうしてあたくしはああいった不穏な未来に惹かれるのかしら。
アニメ『サイコパス』も最高に楽しんでおります。
伊藤計劃氏は、この先を書けたのだろうか
この話の下げは、なんてことはないのです。
これしかない、というくらいの終末味たっぷりの下げ。
でもこれ、普通は、この手をやっちゃうと、もうこれ以上は描けないです。すべてのSFはこれで終わりかねませんから。
いわばSFの「そもそも」論。
だからこそ、もしご存命だったら、伊藤計劃氏はどういう物語を、続いて綴ったのか。
興味はあるけど、今やそれは夢物語ですな。