カミーユは非暴力主義者だが、暴言は吐く。めったにどならないものの、腹を立てることはしばしばだ。もともと頑固なところに、年齢とやもめ暮らしが重なって怒りっぽくなってきた。いや、要するに元来こらえ性がないということだろう。イレーヌにもよく、「どうしていつも怒ってるの?」と言われた。そういうときは少し高いところからものごとを見て──百四十五センチなりの高いところから──驚きとともに答える。「ほんとだ……。怒る理由なんかないな……」。節度を重んじるかと思えば怒りっぽく、柔軟な駆け引きが得意かと思えば暴言も吐く。だから初対面の人間はカミーユを理解できないし、好感をもつこともない。その上性格も明るくはないので、とっつきが悪い。
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誰とでもつながりをもとうとする計算ずくの態度にむしずが走った。もともと社交的だったところに、年齢とともに口達者に磨きがかかり、今や保護者然とした尊大さまで加わったというところだろうか。人類の半分の友であり、残りの半分の母親であると言わんばかりのずうずうしさに、アレックスは苛立ちさえ覚えた。 その顔を見れば、かつての美女がそのままでいたいと望んだためにすべてを台無しにしたのだとわかる。美容整形は時に老いを醜くする。その顔は、どこがどうと特定するのは難しいが、なんとなく全体がずれてしまっていて、顔の体裁をとどめようとしながらも顔としてのバランスを失っている。
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