横溝正史作品て、結構敷居は低いよね。
獄門島――江戸三百年を通じて流刑の地とされてきたこの島へ金田一耕助が渡ったのは、復員船の中で死んだ戦友、鬼頭千万太に遺言を託されたためであった。『三人の妹たちが殺される……おれの代わりに獄門島へ行ってくれ』瀬戸内海に浮かぶ小島で網元として君臨する鬼頭家を訪れた金田一は、美しいが、どこか尋常でない三姉妹に会った。だが、その後、遺言通り悪夢のような連続殺人事件が! トリックを象徴する芭蕉の俳句。後世の推理作家に多大な影響を与えたミステリーの金字塔!!
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戦争に行って、帰ってきた金田一耕助。
まずその辺の時代背景からグッと来ます。
少しではありますが戦争のことにも触れていて、これがなかなか味わい深い。
それでいて、美人三姉妹、芭蕉の句、犯人のフェアプレー精神……。
どれも中二病くさい。
横溝正史って今ならライトノベルを書いているんじゃないか。
それくらい世界観が中学生的。格好いいけど、どこか幼くて悪魔的。
また表現がいいじゃないですか。
耕助はしばらく、上五と下五を交互ににらんでいたが、俳人特有のひねった文字は、さながら、五月雨の泥をのたくるみみずの跡のごとく、尾頭定かならずで、いっこうちんぷんかんぷんである。
at location 1460いまや彼女は繊手をもって落日の孤城をささえているのである。
at location霧はまたこまかな雨となって、降るともなく、しとどに庭をぬらしている。
at location 1992
いいですね。どことなく文学的過ぎず、それでいて過剰な演出で。
まとめ
トリックのレベルが高い、という人もいますが、「本当?」と思います。本件は偶然の要素が強く、再現性が高いとは言えないと思います。つまり本格ミステリとしてはどうなのかしら。
それとは別に、ミステリ小説として面白いかと言われると「結構面白いよ」という感じ。空前絶後の大傑作!とは思いませんが、読んで損はしないでしょ。
「最初に金田一に優しくした女性は生き残る」あるあるでもありますが、早苗さんはラノベヒロイン的でいいですね。