『鍵のない夢を見る』 男ってごめんなさい

生まれてきて申し訳ない気分になります。

望むことは、罪ですか? 誰もが顔見知りの小さな町で盗みを繰り返す友達のお母さん、結婚をせっつく田舎体質にうんざりしている女の周囲で続くボヤ、出会い系サイトで知り合ったDV男との逃避行──。普通の町に生きるありふれた人々に、ふと魔が差す瞬間、転がり落ちる奈落を見事にとらえる五篇。現代の地方の閉塞感を背景に、五人の女がささやかな夢を叶える鍵を求めてもがく様を、時に突き放し、時にそっと寄り添い描き出す。著者の巧みな筆が光る傑作。第147回直木賞受賞作!

マツオさんにおすすめされたので、言われるがままに読んでみたものの、あたくしには若干ハマらなかったかしら。
ただ読了感の悪い印象しか残らなかった、とまでは言いませんが、それに近い。

5つの短編が描かれているのですが、どれも女性が主人公で、どれも男がしょうもない。
確かに、世の中にはしょうもない男も沢山いますが、ここまで“女性の不幸”のようなものを描き続けられるとただ辟易するしかありません。
現実かもしれませんが、それを小説で読みたいとは思えませんでした。

夢があって、それに向けて具体的な行動を起こしていて、少しは将来に望みがありそうだという話を、私は、研究室の最初の飲み会で話していた。  大学二年生の私は夢の塊で、誰に会っても自分と自分の夢である絵とを結びつけて語ることでしか存在価値を計れない子供だった。
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寂しがる声を出さないで欲しい。あなたの親も、姉も、あなたを取り囲む環境というのは、どれだけあなたをきれいなものでくるんで甘やかしてきたのか。考えたら、比でなく、本当に目眩がした。
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こうなってもまだ、透明な夢を泳ぐ彼の姿勢にはぶれがなかった。どういう人か知っているから、もう驚きはしない。しかし、人の死も事件も、取り返しのつかない一線のように思えるのに、当事者にその認識がないことを皮肉に思う。
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引用させてもらったのは5つの中の1つの話。壮大な夢をみることでビジョンが近視になってしまった男と、彼を好きでいながらどうしようもない女性の話。
確かにあたくしのまわりにも、こういうしょうもない人はおります。
おりますが、ただ冷徹に現実的に描いてあるだけ。キャラクターに愛を感じません。

こういう作品を読むと、あたくしは読者として、いかに「作者が愛情を持ってキャラクターを描いているか」を気にするタイプかということを実感しますね。

好きな人は好きかもしれません。直木賞ですし。でも、あたくしには響かなかったなぁ。

表紙

リンク先より引用

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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