ひたすら吉祥寺界隈のいけ好かない店が、沢山出てくる。これは本気で良いと思って書いているのか、それとも皮肉なのか。
青春と恋と――そして短歌!?
ハーフのイケメンなのにチェリーボーイの克夫。デザイナーでプレイボーイの伊賀。対照的なふたりが「短歌」を通じて出会った――。吉祥寺を舞台にした、爽やかな青春ストーリー。
ビデオ屋の店長、佐々木瞳、佐野田さん夫婦、それぞれ登場はするけれど、あまり十分に存在を発揮することなく去っていく印象です。最後、なにか彼らが作用するのかと思いきや、そうでもない。何だかもったいない。
伏線とまではいかなくても、彼らの使い方がもっとあったはず。
みづどりの第二章
p43
「けなし言葉と褒め言葉は同じ重さじゃないと思うんだよ。人は生まれてから 常に死に向かっているから放っておくとネガティブな方へ傾く、だから絶賛の方をたくさん浴びるくらいでないとダメなんだ 。批判をするならより高いレベルの絶賛がいつか生まれるように、作者本人に届くような言葉を使わないとダメだ」
至言ですね。心がけたい。常に死に向かっているから、という理由はピンとこないけど。
あしひきの第四章
p209
「シャカムニ って間違いなんだよな これ」
伊賀さんが解説する。
「お釈迦様は美男って詠んでるわけだけど、本当はお釈迦様じゃなくて 阿弥陀様なんだよ。大仏の手が上品上生の印になっているから……」
鎌倉大仏うんちくね。
与謝野晶子だって仏像にはそれほど明るくなかったんだね。
p212
「知っていますよ。< 好きだった雨、雨だったのあの頃の日々、あの頃の日々だった君>の田尾坂真由香でしょう?」
「そう。<手荷物の 重みを命綱にして 通過電車を 見送っている>の田尾坂真由香だよ」
この物語に出てくる短歌は、すべて実在の歌人が詠んだもの。中でも強弱がつけてあって、ここでは「名歌」として出てくる。
悔しいけど(悔しくない)、確かにこの歌はいい。
あたくしはあんまり自由律好きじゃないから、後者が特に好み。
p229
今すぐにキャラメルコーン 買ってきてそうじゃなければ妻と別れて
これも作中に出てくる、田尾坂作品。良いですねぇ。
短歌はよい。ただ、物語としてはもうちょっと深みが欲しかったなぁ。
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