心から凄いと思う。
森見登美彦と並んで、尊敬する現役作家。そしてその代表作。
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随筆と短編と入り乱れてはいるが、どれも一読の価値がある素晴らしい内容。
どれがいい、悪い、とかそういうレベルじゃない。
どれも凄い。
名古屋を悪ふざけながら真面目に皮肉に愛したことが分かる、本のタイトルにもなった『蕎麦ときしめん』。
私は、その名古屋人の特性を一度、目の前でまざまざと見せつけられたことがある。それは、同僚の名古屋人と、仕事の都合で東京へ出張した時に起こった。その時、半日ほど空いた時間ができたので、私が東京を案内したのである。 東京に関する彼の感想は、私がそれまでに案内したどの地方の人とも違っていた。結論から先に言えば、彼は何を見ても、最初から反感を持って接しているのである。 銀座を歩いた時の彼の感想はこうだった。 「美人がおらんぎゃ」 皇居を見て彼はこう言った。 「天守閣があれせんぎゃ」 地下鉄に乗るとこう言った。 「遅れとるなあ。自動改札だにゃあぎゃ」 私は少々意固地になってきて、彼を新宿西口の高層ビル街へ連れていった。今まで、ここを案内すればどんな人でも、大したものだ、と感動したのである。 彼はなかなか感想を口にしなかった。さすがに文句はつけられないのだろうと、私は気分よく二、三のビルを連れて歩いた。すると、ふいに彼は満足そうに笑いを浮かべ、こう言ったのである。 「不便だなあ。地下街でつながっとらんぎゃ」 こうして彼は東京に勝ったわけだ。やっぱり名古屋の方が上等なのだと思って満足して帰ったのである。 ところが、数日後、私は彼が名古屋の同僚とこんな話をしているのを偶然立ちぎきしてしまった。 「銀座なんかもう歩いとるの美人ばっかだで。名古屋なんか問題にならんでいかんわ。名古屋の女は大体鼻があれせんぎゃ。東京の女は全部ファッションモデルみてやあだでよう。それから新宿の高層ビル。あれはものすげえで。あれにくらべたら名古屋のビルはみんなぺちゃんこだでいかんわ。新宿はすげえわ。アメリカみてやあだでよう」
at location 150
こういう切り口、組み立て、言葉選び、そして、名古屋愛。
なかなかこういうのは書けるもんじゃないです。
個人的に一番好きなのは『商道』ってやつ。
会社の五十周年記念の社史を編集することになった社員の喜劇とも悲劇ともつかない物語。
また、『序文』もよかった。
『英語日本語起源説』の馬鹿馬鹿しさ、阿呆らしさ。
また3年後くらいに読み直したいですな。
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