『師匠、御乱心!』感想④ 男の嫉妬ほど醜いものはない #御乱心 #圓丈 #圓生 #圓楽

しかし、圓丈師匠という人も、相当な頑固者である。

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しかし、それより強く何よりも増して俺は二百五十年続いた三遊亭の噺家だということに強い誇りを持っていた。俺は、柳家ではない、古今亭でも桂でも林家でもない、落語界を二百五十年、柳家と勢力を二分して来た三遊亭なのだ。三遊でも枝葉ではない三遊本流の円生の流れをくむ噺家だ。たとえ三遊亭にタマタマ入門しようが、俺が新作を志し、高座を這いずり廻ろうが、十三年間叩き込まれた芸は、たとえどんな形にしろ、俺の血となって全身を駆けめぐっているのだ。こんな感じは多分理解出来ないだろう。出来なくても俺は三遊の芸人だ! 俺は、プライドの高い三遊ナショナリストだ。  極論すれは三遊国粋主義者だ。三遊派は落語が存在し続ける限り、永遠に一方の雄として繁栄を続けねばならない、という固い信念を持っていた。

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三遊国粋主義者の俺から見れば、円生も円楽も円窓もみんな大バカヤローだ!  第一、円楽など所詮、先代円歌に弟子入りを断られ、円生の所に来た枝葉の奴だし、円窓は、先代 柳 枝 に死なれてやって来た預かり弟子だ。俺は違う。先代柳家つばめを知人から紹介され、その弟子入りを断って円生に入門した、三遊本流で純粋培養された子飼いの弟子なのだ。  お前らなどに、三遊本流を潰された俺の悔しさがわかってたまるか。

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我が師六代目円生を絶対に許さん! 三遊亭は、六代目円生の為にだけあるんじゃない。円生は全部で六人いた! その六人目の円生は、自分勝手に潰してしまって他の五人の円生にどう申し訳が立つんだ。そして三遊本流の不世出の名人、落語界中興の祖、 円朝 に顔向けが出来るのか!  円生は三遊本流の 総帥 なのだ。いつも三遊派の繁栄を考えて、先を読み、次の世代に円生を継承して行かねばならない。  その立場にある円生は、俺達を惨めな戦争孤児にしてしまい、落語協会に戻る弟子達は、三遊難民なのだ。いくら円楽、談志にそそのかされたとはいえ、六代目円生を三遊国粋主義者の俺は、絶対許さん。

我こそは落語三遊亭の純粋かつ正当な後継者である、という強い自負。これはなかなか書けるものじゃない。新作派であればなおのこと。言えないでしょう。

こういう男社会の縄張り争いというか、椅子の争いって、本当に醜い。猿だと好意的に見られるのに。なんででしょ。先日、ある町内会で前町内会長と現町内会長が口論を飛ばしているのを見ましたが、本当に醜い。おじさん同士の喧嘩は本当に醜い。他山の石とするべからず、だね。男の嫉妬はほんと、醜い。

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『御乱心』を出して三十年以上が過ぎた。発売当初は爆発的に売れ、十六万部までいって、 立川 談 春 の『赤めだか』に部数を抜かれるまでは、落語本の中では一位だった。

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弟子のらん丈。彼は、円丈の一番弟子。前座名が、 丈 々 寺 だった! 前座から二ツ目昇進する時に『御乱心』の宣伝も兼ねて、『御乱心』の「乱」と円丈の「丈」をとって、「 乱 丈」に改名したが、高座で大暴れして大活躍するかと思ったらパッとしなかった? そこで十年後、真打昇進の時は、乱れる「乱丈」では名前負けしてるので、漢字を平仮名にかえて「らん丈」にした。

後日談も面白い。この圓丈師匠の独特のセンスね。独り言のような文体に心踊らされる。圓生の弟子の本より談志の弟子の本のほうが売れたのが、ちょっと悔しいのかな?と思わせるあたりもキュート。

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なんといっても『御乱心』を献呈して一番喜んだのは、先代の小さん師だった。「この本は面白い、ホントにおもしろい!」と絶賛し通しだった。  そこで「師匠、どの辺がおもしろかったですか?」と聞いたら「うん、俺のことが、書いてあるから面白い! ホラ、ここにもここにも書いてある。アハッハハ……おもしろい」  このストレートさ、単純明快さ、だから小さん師には周りに人が自然に集まって来て、運も上昇する。

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この小さん師は、若い頃から 大日如来 を信仰していて、小さなお守り袋に入れ、如来像を首から下げ、肌身離さずいつも掛けていた。  戦争で日本が負け、小さん師が捕虜になった時、小さんは、自分が信心していた大日如来を取り上げられたら大変だ、捕虜になったらアメリカ軍に取り上げられてしまうと、その大日如来像をゴクンと飲み込んでしまった。なんとあの小さん師の体の中には大日如来が入っていた。つまり小さんは、大日如来と一体化してしまったのだ。  円生が三遊協会なんか作ったって、運の強さで小さんに勝てる訳がない。なにしろ小さんには、大日如来が付いてるんだから。日本人の中で大日如来を飲み込んだ人って何人いると思う? 二人か三人だよ。それも知らずに小さんと戦った円生は、運がない。ここにこそ、小さん、円生の決定的な差があるのだ。

ほんと、小さん師匠は凄い。ああ生きたいものだ。無私の心、というか。欲がないというかね。

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円丈  うちの師匠、稽古してる奴の顔見てないからね。
小遊三  アニさんが『 真田 小僧』やってるときは、爪切ってましたよ。
円丈  そう、爪切ってるの(笑)。顔見ないんだよ。
小遊三  それで、最後に一言、上目遣いでね、「おまえさん、稽古をしてませんね」って。

こええな。やっぱり人間、最後は愛嬌なのかしら。圓生は小さんに勝てない、これ、教訓ね。

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