新書でこんなに刺激を受けるのは、はじめてかもしれません。
「シャーデンフロイデ」とは、他人を引きずり下ろしたときに生まれる快感のこと。成功者のちょっとした失敗をネット上で糾弾し、喜びに浸る。実はこの行動の根幹には、脳内物質「オキシトシン」が深く関わっている。オキシトシンは、母子間など、人と人との愛着を形成するために欠かせない脳内ホルモンだが、最新の研究では「妬み」感情も高めてしまうことがわかってきた。なぜ人間は一見、非生産的に思える「妬み」という感情を他人に覚え、その不幸を喜ぶのか。現代社会が抱える病理の象徴「シャーデンフロイデ」の正体を解き明かす。
中野信子さん、最近NHKで見るなーと思いまして。鋭いコメントされいたので一冊読んでみようと思った次第。あたりでした。
脳科学、というジャンルは全く知らなかったのですが、読みものとしては面白い。変な哲学より腑に落ちる。
位置: 39
それは、「愛」や「正義」が、麻薬のように働いて、人々の心を 蕩かし、人々の理性を適度に麻痺させ、幸せな気持ちのまま誰かを攻撃できるようにしてしまう、ということです。 愛は人を救うどころか、それに異を唱える者を徹底的に排除しようという動機を強力に裏打ちする、危険な情動です。
愛は人を狂気に落とす。なるほど、そのほうが分かりやすい。だから愛を利用したがる人が跡を絶たない。
位置: 110
「シャーデンフロイデ」は、誰かが失敗した時に、思わず湧き起こってしまう喜びの感情のことです。位置: 131
シャーデンフロイデという単語はドイツ語で、Schadenfreudeと綴ります。Freudeは喜び、Schadenは損害、毒、という意味です。
嫉妬の一つ、何でしょうかね。ざまーみろ、ってやつか。
あるなー、あたくしも。なるべく思わないようにしてはいるけど。
位置: 138
しかしごく最近、オキシトシンがこれらの効果と同時に、妬み感情も強めてしまう働きを持つことがわかってきたのです。シャーデンフロイデが妬み感情と不可分であることを前提とすれば、オキシトシンは、妬みからシャーデンフロイデに至る一連の感情の流れを強めてしまう物質であると考えることができるでしょう。 不思議な感じがするかもしれません。なぜ「愛情ホルモン」「幸せホルモン」と呼ばれる物質が、こんな嫌らしい、持っているだけで恥ずかしくなるような感情を、同時に強めてしまうのでしょうか。
愛情ホルモン・オキシトシンは妬みを強める。これが本著の最初の強調部分でしょう。無償の愛というのがいかに難しいか。
位置: 313
私たちが自分の意志で決定していると思っていることは、実際には、脳に分泌される物質に大きな影響を受けていることがほとんどです。位置: 315
これらの反応は、目に見えない臓器である脳で起こっているために、私たちは自分が自分の行動を決めていると錯覚してしまいがちになるのですが、本当は行動の大部分が、ただ化学物質によって突き動かされているだけなのかもしれないのです。
序盤にして本著の結論。脳の反応に行動が支配されているかも、という。アンガーマネージメントとかってのもそうやって距離をとって考えれば、少しは楽になる……かも?
位置: 441
で、向社会性が高まると、合理的な判断は次第にしにくくなっていきます。 これらはどうやらトレードオフの関係にあるようで、いわゆる「人間性」を重視すると、それをないがしろにしたり、切り捨てたりするような、反社会的に見える選択をとりづらくなっていくのでしょう。 そして、この向社会性をより高めるのが、〝愛と絆のホルモン〟オキシトシンです。
オキシトシン、いわゆる愛によって向社会性が高まる。すると非合理的になる。怖いね。恋は盲目というけれど、あまり長く恋などしないほうが良いのかも。
位置: 536
不倫騒動があると、まさに老いも若きも男も女もいきり立ってその対象をバッシングします。 詳しくは後述しますが、こうした攻撃が度を越したものになっていくのは、向社会性という一見「正しいもの」に暴力的な力が潜んでいるからです。
まさに。向社会性とは異質の排除に変化しやすいっつーことか。容易に起こりますね。それは歴史が証明するところです。
位置: 493
オキシトシンが安らぎと癒しをベースにした絆であるのに対し、アルギニン・バソプレシンは逃走または闘争をベースにした絆のホルモンです。 アルギニン・バソプレシンの受容体をアルギニン・バソプレシン・レセプター(AVPR)と呼びますが、その特徴を調べることで、いろいろ興味深いことがわかってきています。どうやら、浮気性かどうかといったことも、ある程度までは、その個体の脳を見ることでわかるようなのです。位置: 507
AVPRのある型を持っていると、男女ともに長期的な人間関係を結ぶのが難しく、パートナーに対して不満度を高め、不親切な振る舞いをすることがわかりました。
浮気しやすいかどうかも、既に脳の遺伝によって違っている、という。もはや意志などないのかも。脳によって行動に理由が付けられているだけかも。
位置: 547
女性は、単純にセックスのエクスタシーでつなぎ止められているのではなく、オキシトシンによってつなぎ止められているのです。いわば「オキシトシン商法」と言っていいかもしれません。
オキシトシン怖えわ。ひたすらヤンデレ的な擬人化が脳内で行われています。怖い。
最新記事 by 写楽斎ジョニー (全て見る)
- 鴨志田一著『Just Because!』感想 俺にはなかった青春 - 2023年6月6日
- 映画『メジャーリーグ』感想 こういうのでいいんだよ - 2023年6月5日
- 映画『ブロンコビリー』感想 これぞ時代劇 - 2023年5月31日