『変身』には東野圭吾の女性観が表れてる?

ちょっと女性の描き方に癖がありますよね。

世界初の脳移植手術を受けた平凡な男を待ちうけていた過酷な運命の悪戯!
脳移植を受けた男の自己崩壊の悲劇。
平凡な青年・成瀬純一をある日突然、不慮の事故が襲った。そして彼の頭に世界初の脳移植手術が行われた。それまで画家を夢見て、優しい恋人を愛していた純一は、手術後徐々に性格が変わっていくのを、自分ではどうしょうもない。自己崩壊の恐怖に駆られた純一は自分に移植された悩の持主(ドナー)の正体を突き止める。

現代を代表する作家であることは疑いようのない事実で、そのミステリの書き方には好感をもっているのですが、ちょっと女性の描き方がテンプレ的なところがある気がして。

p204
葉村恵の日記4
七月十四日土曜日(くもり)
なんていくじなし、なんて卑怯者。とうとうジュンの元から逃げ出してしまった。
愛されていないことに気づいたから?違う。彼の変化が、単なる心変わり何ていう俗っぽいものでないことは、あたしが一番よく知っている。そしてそのことで彼が苦しんでいるに違いないことも。
(中略)
ああ神様せめて私は彼のために祈ります。どうか彼を、あたしのジュンを救ってください。

聖母的というかね。恵さんは最後までお母さんのような愛で主人公と対するんですよ。多少逃げたりとかはしますがね。

p259
「その大きな力というのはなぜそんなに手術をさせたかったんだ」
「それは決まっている。脳移植手術の可能性を確かめ、その技術を一刻も早く完成したかったからだ。彼等には時間があまり残されていないのだよ。」
「彼等?」
「彼等の脳にはと言うべきかな」堂本は両手で頭を抱える仕草をした。「現在の世の中を運営しているのは、彼等老人なのだよ。医学の進歩で肉体はますます長持ちするようになり、彼らが君臨できる期間も伸びた。だが脳の老化だけはどうしようもない。
(中略)
彼等は恐れているのだよ。人間としての尊厳が失われる日が近づくことを」
「そこで移植に望みを託しているわけか」
「それが最後の道だと彼らは信じている。

そして背後には大きな存在が。この辺りは盛り上がるところ。漠然とした大きなバックが存在することをほのめかし、話を大きくみせておいてあくまで局地的に盛り上げるという。

p382
その際彼女は一枚の絵を私に見せてくれた。たった一枚だけ売らずに手元に残してあるのだと言った。それは純一が最後に描いた絵だという。
彼がたった1枚だけ書いたという裸婦像は、未完だが、葉村恵のソバカスまで丹念に描いたものだった。 

なぜ葉村恵は自分の裸婦像を一介の刑事にみせてくれたのか。ここがこの作品の最大のミステリかもしれません。

さすがは東野圭吾。読み始めたら一度も止まらず読める。読みやすい。流れるようである。しかし、葉村恵という女に、最後まで奥行きを感じなかったです。

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