好きだが質は問題『ルビンの壺が割れた』

マツオさんからのおすすめ。
ちょっと疑問はあります。

「突然のメッセージで驚かれたことと思います。失礼をお許しください」――送信した相手は、かつて恋人だった女性。SNSでの邂逅から始まったぎこちないやりとりは、徐々に変容を見せ始め……。ジェットコースターのように先の読めない展開、その先に待ち受ける驚愕のラスト。覆面作家によるデビュー作にして、話題沸騰の超問題作!

読者をいい意味で裏切る、という好きなジャンルの話ですが、看過できないザルミステリでもある。自分の中の「いかがなものか」という老害要素が顔を出します。

位置: 229
モーツァルトの曲の中に「音楽の冗談」というディベルティメントのような曲があります。彼が円熟期に書いたものですが、一風変わった曲です。というのは、わざと下手くそに作曲し、同時代の二流の作曲家や演奏家を 揶揄 した曲だからです。しかしそれは一流の腕を持った作曲家でなければ作れない曲なのです。貴女の下手な芝居から、ふとその曲を思い出しました。

これなんだそうです。素養のない自分には何のことやらですけど。

位置: 273
事情を聞いた水谷様は、即座に相手の学生の前に土下座をしました。
わたしは水谷様がいささかも躊躇せずそうなされたことに、大変驚きました。
水谷様は他の男子部員たちにも、土下座をするように言いました。
部員たちは部長自らが土下座をしたのを見て、黙って従いました。
意外な成り行きに、相手の大学生たちは拍子抜けしたようですが、そのまま終わりにしてしまうのは 癪 に障ったのでしょう。今度は、わたしたち女子に、お詫びに酒の酌をしろと言い出しました。
その時です。水谷様は突然立ち上がると、「そんなことは断じてさせん!」と言って、いきなり店の壁を素手で殴ったのです。
大きな音を立てて壁に穴が開きました。
「俺が死ぬか、お前らが死ぬか。命のやりとりしたい奴はかかってこい!」
水谷様は店中に響き渡るような大声でそう言うと、壁を殴った右手を突き出しました。

いいよね。こういうエピソードが効果的なのは間違いない。
読者もつい、彼らに好感をもって接する。

位置: 642
その冬は毎日、優子とセックスしました。夜、叔父夫婦が寝た後、お互いがこっそりと部屋を訪ね、体を重ねました。叔父夫婦が出かけている時は昼間でも愛し合いました。

この辺からかな?「あれ?そんなこと話す?」って思い始めたの。
これは、ちょっと、おかしいぞ、ってね。

思ったんですよ。これ、全部が劇なんじゃないの?ってね。この往復書簡が『ルビンの壺』の台本なんじゃないかってね。じゃないと不自然すぎる。

位置: 1,130
ただ、私はその混乱の中で、高尾君の姿がないことには気付いていました。出席予定の友人たちの中で姿を見せていなかったのは彼だけでした。  高尾君が貴女と昔付き合っていたことは知っていました。しかし私と付き合うようになってからは、別れたものと思っていました。そうではなかったのですね。

そして話は圧倒的な速度で終演へ。
好きなタイプの話ではありますが、質があまりよろしいとは思えない。ただ「読者を騙すだけ」の小説であるというのは、ずるい。
この手の小説が好きなだけに、看過できないおじさんです。

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