『定本 バブリング創世記』感想 これ気持ちいいやつ

『涼宮ハルヒの直感』のなかでキョンがおすすめしているのを読んで、「そういえば筒井康隆最近読んでないな」と思い購入。

いや、確かに面白かった。皮肉に満ちている。

筒井康隆の世紀の奇書が“定本”として三十七年ぶりに復刊!“ドンドンはドンドコの父なり。ドンドンの子ドンドコ、ドンドコドンを生み…”ジャズ・スキャットで使われるバブリングを駆使し、奇想天外なパロディ聖書として読書界を驚倒させた表題作ほか、初刊文庫で未収録だった実験作品「上下左右」(イラストは雑誌掲載時の真鍋博)を収録した完全版。書下しの自作解説を併録。全十篇。

確かに奇書ですが、分かりやすいです。

位置: 191
その日突然、オニが会社にやってきた。
オニは赤鬼で、樫の木のような腕に鉄ボタンのついた金棒を持ち、その金棒でドアを 叩きこわして原価計算第二課のオフィスに入ってきた。

いい書き出しだよね。もう丁寧に舞台設定をする気がなくて。でも面白い。

位置: 473
それでもほかにすることがないまま暇にあかせ金にあかせてまだ観光地めぐりを続けているうち、やっと五年前になって、今度は、日本の観光地というのはすべて観光地のパロディなのだということに気がついた。最初は観光資源に 乏しい観光地が大観光地の真似をしていたのだ。そのうち大観光地までが観光資源そのものから遊離してしまい、とにかく観光地らしい装いを 凝らすことにのみけんめいとなり、日本中の観光地がまたたく間に同じになってしまった。観光地という登録商標で大量生産された既製品が日本全国へばら撒かれたようなもので、そのため観光地ではホテルと旅館の区別がなくなり、どこの料理も同じになった。こんな 馬鹿 な話はない。本物がなくなりパロディばかりになった観光地を歩きまわる必要を感じなくなって、おれは旅をやめた。

これ、言われてハッとしますね。確かにそう。
観光というのもすべてパッケージ化されています。

位置: 766
おれは、昨夜の酒代と宿賃を払わなければと思いながら源さんに近づいていき、おれに気がついて手をあげた彼ににやりと笑いかけた。「源さん。あなた、儲けましたね。

これ、この話面白かったんだけど、サゲが最後意味わかんなかったな。
カタルシスを期待していたけど、ちょっと不完全燃焼。

位置: 2,058
憲法学者 無茶苦茶です。だいたい「休息権」だの「全面発達権」だの、そんなことばは憲法学者のわたしですら聞いたことがない。社会学の方でどんな言葉を勝手に作っているかは知らんが、そんなものをここへ持ち出されては困ります。
社会学者 そうら。あなたがたはいつもそれだ。現実よりもことばを重要視する。
憲法学者 ほうら、これが社会学者の悪いところなんですよね。これじゃ社会学はいつまで経っても学問とは言えない。

この辺も、有象無象の学者たちがなじり合う様を皮肉に描いてて良い。

筒井康隆のセンスを堪能しました。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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