なんだろう、モヤモヤする作品でしたね。
愛ではない。
けれどそばにいたい。
新しい人間関係への旅立ちを描いた、
息をのむ傑作小説。最初にお父さんがいなくなって、次にお母さんもいなくなって、わたしの幸福な日々は終わりを告げた。すこしずつ心が死んでいくわたしに居場所をくれたのが文だった。それがどのような結末を迎えるかも知らないままに――。だから十五年の時を経て彼と再会を果たし、わたしは再び願った。この願いを、きっと誰もが認めないだろう。周囲のひとびとの善意を打ち捨て、あるいは大切なひとさえも傷付けることになるかもしれない。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。本屋大賞受賞作。
「一般的な犯罪行為でも、道徳的に許されるケースってあるよね?」的な物語。
個人的には「ねーよ」という感じです。
この話が本当に起きたことだとしたら、「辛かったね、お幸せに」という感じですが、この物語を読んで勇気をもらうロリコンがいたとしたらと思うと全然素直に感動出来ませんでした。
位置: 130
ちょっと代わってとターナーをわたしに 譲り、お母さんは 棚 から美しい水色のボンベイ・サファイアのボトルを取り出した。それに真夏の草原みたいな緑色のグリーンペパーミント、レモン果汁とシロップとソーダをステアして、氷をたっぷり詰めた大ぶりのグラスにそそぐ。
まったくイメージが出来ない描写。なにそれ。ボンベイ・サファイア?
飲んでるものが異次元すぎる。
位置: 658
「ぐうたらなお休みに」
お母さんが言っていたことをそのまま真似た。
いい乾杯の言葉。
位置: 696
わたしはお母さんにとって、生きていくために必要なご飯にも、悲しみが紛れるお菓子にもなれなかった。それどころか、お母さんの大嫌いな『重いもの』になった。お母さんは重いものは持たなかった。お母さんは我慢をしない人だった。
まずこの物語で最低なのは母親ね。自由ったって限度があるでしょ。まぁ、どこまでも自由本位なんだろうな。
地獄に落ちたらいい。
位置: 1,030
「更紗はなにも心配しなくていい。俺がちゃんとするから」
わかっている。前の恋人も、亮くんも、よく似たことを言う。気持ちは嬉しいし、生活を共にすることで彼らは現実的にわたしを守ってくれる。それは頼れる身内のいないわたしには本当にありがたいことだった。けれど――。
なんにも分かっていない「誠実な」男性が言いそうなフレーズ。
あたくしも無意識に言っていたかも。あきまへんな。
位置: 1,643
文が大人の女性を愛せるようになれたのなら、よかった。わたしはずっと文が幸せでありますようにと願っていたから、今、心から安堵している。なのにたまらなく寂しい。どこにも居場所がなくて、だからしっかりと手をつないでいた九歳のわたしと十九歳の文はもうどこにもいない。あれは終わったおとぎ話なのだと、改めて思い知らされた。
理解できない感情ですね。安堵して寂しい。保護者目線に近いのかな。
位置: 1,833
親に捨てられた子供の人生は、予期せぬ方向にむりやりねじ曲げられる。そういう大きな悲劇に至らないために、お母さんが楽なのが一番だとわたしは思っている。
悟ってんなぁ。
位置: 2,150
「更紗は相変わらずだな」
文が小さく口の端を持ち上げる。ああ、そうだ。文はこういう笑い方をする人だった。懐かしさにむせそうになりながら、わたしは唐突に気づいた。今、文は、更紗と呼んだ?
「忘れたふり、しないの」
問うと、文はゆっくりとなにもない中に視線を移動させた。
「俺には関わらないほうがいいと思ってた。なのに、すごい有様でやってくるから」
スカした対応にいけ好かない反応。
そういうのが好きなんだろうけど、どうも腑に落ちない。
こういう、体が板のような、繊細で中性的な、葛藤で苦しんでいるオスが好きなんでしょうね。
位置: 2,450
わたしは大きく息を吐いて天井を仰いだ。もう駄目だと思って別れるのに、今さら罪悪感に駆られる自分が嫌だ。こんなの優しさでも思いやりでもない。わたしは目を閉じて、男が待つ深緑色の車に乗り込むお母さんを思い出した。ベランダから手を振るわたしに、お母さんは一度も振り返らなかった。憎まれてもいいという決意。あれは見事な去り際だった。
そうかもしれない。そしてお母さんは最後まで出て来ない。見事である。
もう更紗のことは忘れているかも。
位置: 3,383
「おまえも自由に生きてるじゃないか。俺との結婚をやめて、話し合いもせずに家を出ていって佐伯文と暮らしてる。俺はそれを認めなくちゃいけない。だって、それぞれ自由に生きる権利があるんだからな。だから俺も自由にしていいだろう。それをおまえも認めろよ。みんなが自由に生きて、みんなの自由を尊重するために、みんなが我慢をする。矛盾してるけど、そういうことだろう。自分は自由にするけど、自分を傷つける事柄は嫌がらせだからやめてくれって、それが通るなら、おまえのしてることはただの身勝手だ」
言い返せなかった。
ど正論。しかし、自由というのはその矛盾と常にバランスを取りながらあるものですからね。
位置: 3,939
ぼくはわずかに怖い。自分の抱える病気を受け入れてはいるが、これほど如実に変化していく女という性を恐れる気持ちが抜けない。
なんて病気なんだろ。
このあたりかな。
位置: 4,019
凪良ゆうは二〇〇六年よりBL(ボーイズラブ) のシーンで作家活動を始め、BL作品だけでも四〇作超の著書がある。
へぇ、BL作家が出発点の方なんですね。
道理で、という印象ではある。
まとめ
面白く読めたんですが、心から「そうだよね!」と思えないのは、あたくしが二人の娘を持つ父だからでしょうかね。
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