曲亭 馬琴著、石川 博編集『南総里見八犬伝』感想 アイドル文化の片鱗を感じる

このビギナーズ・クラシックスですら、読破するのは相当に難しかった。

仁義礼智忠信孝悌の玉を持つ八犬士の活躍を描く、江戸伝奇小説の傑作!
不思議な玉と痣を持って生まれた八人の男たちは、やがて同じ境遇の義兄弟の存在を知る。完結までに28年、98巻106冊の大長編伝奇小説を、29のクライマックスとあらすじで再現した『八犬伝』入門。

名前は聞いたことあるけど、映画もあたくしの世代ではメジャーではないし、得体の知れないもの。そういうときにこのビギナーズ・クラシックスシリーズはうってつけ。

しかし、大長編なのは分かるけど、長いのよ。大河ドラマとかにならないかしら。

位置: 22
『八犬伝』は日本古典中の最長作品です。最長とは、分量と完結までの期間の長さという両方の意味を含みます。分量は百六冊(活字に組んで文字数を比べると『源氏物語』の二倍以上)、年月は二十八年間です。

源氏物語も大河になるらしいから、ぜひ里見八犬伝も!と思えるかしら。なにせ106冊だからなぁ。

13回

位置: 486
あれよあれよと 見 ているうちに、 山 下ろしの 風 に 乗って 八つの 玉 は 八方 に 散り 失せて、 跡 には 山の端 に 月 がかかっているばかり。 実はこの 玉 こそ、 数年 の 後 に 八犬士 が 出現 し、 里見 の 家 に 集まる、その 端緒 であったのだ。

ドラゴンボール?アヴェンジャーズ?とにかく、アガる展開の布石であることは間違いない。

19回

位置: 630
この 子 こそ 犬 塚 信 乃 で、 兄 三人 が 夭逝 したことから 幼い 頃 は 女の子 として 育てられた。
信乃 は 武芸 に 優れた 子 に 育った。いっしょに 成長 した 犬 は 四本 の 足 が 白かったことから、 四 白( 与四郎)と 名づけられていた。

このさらりと書く感じ、日本だなぁと思いますね。女の子として育てられた?性倒錯の楽しみを、すでに日本人は発見していたんだなぁと思う。

32回

位置: 2,208
これで犬士のうち五人が判明した。犬塚信乃、犬飼見八(現八)、犬川荘助、犬田小文吾、そして 火遁 の術で消えた犬山道節である。ただし一堂に顔を合わせたわけではない。次第に仲間が集まっていくという趣向は『 水滸伝』にならったものであろう。しかし、『水滸伝』では一人一人が十分に書き込まれているわけではない。その点『八犬伝』では犬士それぞれの出自が語られ、主君や家族が語られ、人物像も描かれている。読者はおのずといずれかの犬士をひいきにして楽しんだだろう。

すでに「推し」の文化もある。
水滸伝も、アイドル文化としてすでに熟して利用している印象すら受ける。おそるべし。

43回

位置: 2,462
明治十九年(1886)、坪内逍遙は有名な評論『小説神髄』の中で、『八犬伝』を批判する。八犬士について「仁義八行の化物にして、決して人間とは言いがたかり」と記す。近代の小説観によれば、リアリティを持つ人物像を造形すべきであり、この世の人間とは思えない力を持った八犬士は小説の登場人物にふさわしくないのである。

あたくしも、ついリアリティ至上主義的なことを言い出しがちな老害ではありますが、しかし、冷静に考えれば別にリアリティなんてなくたって楽しけりゃいいんだ。ただ、おじさんとして、小さなリアリティにはこだわってほしいとは思うけどね。

しかし坪内逍遥も大人げないなぁ。マジレスしてる。

60回

位置: 3,464
毛野は女装して世を過ごしていた。また信乃も幼い頃、少女の姿で育てられた。これらについて馬琴は、本書全体の冒頭の口絵で予告している。その絵は、「八犬士あげまきのとき(幼いとき)、かくれあそびの図」と題されており、 丶大 法師と子供の八犬士が描かれている。八犬士のうち、毛野と信乃が女性姿なのだ。この口絵を含んだ五冊が発売された時点で、丶大法師はまだ出家しておらず(名前が 金碗 大輔)、八犬士は登場していない。そして、物語の展開上、八犬士が幼い頃同時に遊ぶことはあり得ない。

これは驚いた。すでにこの時点で、物語上ありえないものを自由に書き、それを読者が愉しむという、いわばSS的楽しみ方が広く共有されていたというのか。

むー。


まとめ

ながくって、このへんで一旦挫折。
やっぱり要約じゃこのへんが限界だわ。読むならちゃんと読まないとね。登場人物多すぎて、覚えきれないし。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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