桃井かおりの存在感。『男たちの旅路』みたまんま。あんまりこういうキャラクターで息の長い活躍をする存在を知らないね。
北海道で、支笏湖の旅館の若旦那(湯原昌幸)に、言い寄られていた入江ひとみ(桃井かおり)のピンチを助けた寅さん。結局、若旦那の宿に泊まり、マリッジブルーのひとみの悩みを聞いてあげる。それからしばらくしたある日、ひとみは、婚約者の小柳邦男(布施明)との披露宴の当日、ホテルからウエディングドレスのまま逃げ出し、とらやへとやってくるのだが… 田園調布のお嬢さんを田園地帯の貧しい娘と勘違いしてしまう寅さん。ウエディングドレスを来たまま、若いマドンナがとらやに現れる。『幸福の黄色いハンカチ』(77年)で、山田洋次監督と出会った桃井かおりの、ユニークなキャラクターをそのまま「男はつらいよ」の世界に登場させている。何不自由なく育ってきたお嬢さんが、マリッジブルーに悩み、本当の幸せについて真剣に考える。その婚約者に布施明。二人がもう一度、お互いを意識し合う場面は、山本直純の音楽とともに、観客を幸福な気持ちへと誘う。
アンニュイ、という言葉がピッタリの桃井かおりさん。常にロキソニン持ち歩いてそう。きれいなんだけどどこか幸が薄そうなのが魅力なのかな。
布施明さんの独唱は圧巻。ただ、シリーズ23作目ということもあって、そういう「個」の力での違いを出す必要があったんじゃないかな、という邪推もあり。
寅さんばっかり観ていると、ちょっと寅さんが可哀想になるよね。そろそろ良い恋させてやれよ、という気持ちになる。国民はそれを望んでいないだろうけど。