初期黒澤映画の傑作、といっていいのでは。
巨匠・黒澤明監督が初めて本格的な犯罪サスペンスに挑んだ意欲作。暑い夏の日の午後。若い刑事村上は射撃練習を終え、満員のバスに乗り込み帰路につく。しかし、車内でコルト銃を盗まれたことに気づき、慌てて犯人らしき男を追うが結局路地裏で見失う。コルトには実弾が7発。村上の必死の捜索もむなしく、やがてそのコルトを使った強盗事件が起きてしまう。窮地に追い込まれた村上は老練な刑事佐藤の助けを借り、コルトの行方を追うのだった……。真夏の都会を覆う息苦しいほどの灼熱の空気が緊迫感を生み出し、切れ味鋭い演出が目を見張る。
作中に「アプレゲール」という言葉が出てきます。なんのことだと思って調べてみたら。
戦後派、という意味なんだそうな。当時はそれほど意味のあった言葉なんでしょうね。戦中派不戦日記などで読む程度しか知らない言葉だけど、とても意味があったんだろうと推察します。志村喬が皮肉たっぷりにアプレゲールを引用する感じなんか、人類は今でもやってるムーブだよね。
三船敏郎の若々しさ。『酔いどれ天使』が1948年、本作が1949年だというから、まだスターになって間もない頃。というかデビューからもそう経っちゃいない。ヒゲもなく、清潔感があります。晩年のふてぶてしい役とは大違いだね。まだフレッシュさがある。志村喬とのコンビは本当にいい感じ。きっと当時の女性たちもキャーキャー言ったのではないかしら。
当時はまだ戦後まもなく。その世相の中で、この作品はどんな意味があったのか。想像しか出来ませんが、きっと快哉をさけばれたんじゃないかな。