恥ずかしながら初見。素晴らしい映画でした。
ビリー・ワイルダーの代表作ともいえるシチュエーションコメディ。10年温めたアイデアで、時代の流れにあわせてようやく映像化にこぎ着けた。出世と上司へのゴマスリのため、自分のアパートを愛人との密会場所として重役に提供するバクスター。お調子者の彼は出世街道に乗り意気揚々とするが、思いを寄せていたエレベーターガールまでもがアパートを出入りするひとりと知り、愕然とする。ワイルダーはこの作品で念願のアカデミー監督賞を手にした。
1960年公開。ヒッチコックの『サイコ』と同年公開ですね。毛色は違うけど、本作のほうが好み。
主演のジャック・レモン氏の小物ぷりから、シャーリー・マクレーン氏の芯がありつつも弱い女性の演技、音楽の大味な演出、どれも完璧。最後までバクスターを小物で通す、脚本も見事。
植木等のような出世っぷりだけど、そこには哀愁が漂う。これもまた一つの無責任男かしら。
派手なシーンはないし、最後もそれほど大団円ではない。
ただ、そこにしっかりとある人間味に、グッと引き寄せられる。小津安二郎味を感じました。感服。