Podcast: Play in new window | Download
Subscribe: RSS
本の面白さ自身もマジックなところがあります。
奇妙な寒村を開墾しながら孤独に生きる一族。その宿命を描いた、目も眩む百年の物語。
1967年にアルゼンチンのスダメリカナ社から刊行されて以来、世界の名だたる作家たちが賛辞を惜しまず、その影響下にあることを公言している世界文学屈指の名著。現在までに46の言語に翻訳され、5000万部発行されている世界的ベストセラー。「マジック・リアリズム」というキーワードとともに文学シーンに巨大な影響を与え続けている。2022年にはNETFLIXが映像化の権利獲得を発表、大きな話題を呼んた。蜃気楼の村マコンドを開墾しながら、愛なき世界を生きる孤独な一族の歴史を描いた一大サーガ。解説=筒井康隆ミクロとマクロを往来する、「物語」にしか成し得ない奇跡。――西加奈子(作家)
想像力の限界を超えた作品。この本がなければ、ぼく自身が小説を書けなかった。――小川哲(小説家)
毎晩この本を10ページ読んで、南米の魔法に酔いしれよ!――齋藤孝(明治大学文学部教授)
新潮文庫から出た文庫版。文庫で1,000円を超えるので少しためらいましたが、購入。齋藤孝さんのいうとおり、毎日10ページ読みました。じゃないと、長すぎて読まなくなっちゃうよね。一月以上かかりましたが、なんとか読了。
実は10年以上前に一回読んでるんですよね。ただ、当時はあまり分からなかった。果たして今回は。
p41
同情した ウルスラは死人がかまどの鍋の蓋を開けているのを見かけた次の機会には彼を探しているものの見当が即座についたので、それからは 家のあちこちに水を張ったカナダライを並べておくことにした
死人がタンポンをしめす水を求めて彷徨う、などの不思議な描写が沢山。ナンセンスなのか?
p56
ホセ アルカディアはそんなものには目もくれなかった。 蝮男に対する くだらない質問が続いてる間に 彼はジプシー娘のいる 最前列まで人混みを 掻き分けていき、その後ろに立った。そして娘の背中に ピタリと身を寄せた。娘は離れようとしたが 、ホセ・アルカディオ はますます強く 体を押し付けた。それで 娘は感じた。急に大人しくなって彼にもたれ、隠しようもない あの一物の存在が信じられないのか、激しい 驚きと不安に震えていた。
本書に度々でてくる巨根マジック。上品なモノを持つあたくしとしては何だかなぁと思う。
p58
「あんたこの子に怪我させちゃダメよ」
ホセ・アルカディオの相手がそっとしておいてくれと頼むと、2人はベッドのそばの床に横になった。他人の情欲が ホセ・アルカディオの熱を掻き立てた。最初の接触で娘の骨はドミノの箱がきしむような 乱れた音を立て、今にもバラバラになるのではないかと思われた
巨根半端ない描写。思わず笑っちゃうけど、卑近な例を出してお茶を濁された感じもする。笑っちゃうけどね。
p145
彼は数カ国語の文句が赤や青で刺繍された信じられないような逸物をカウンターに乗せて一同に披露した。
これもそう。そこにばかりマーカーをひくあたくしも品がないけれども。
p189
[しまった!」 今頃になって彼は思いついた。「女が生まれたら レメディオス とつけるように言っておくんだった」。 そして 身を裂かれるような激しさで 一生苦しめられ同士だった恐怖を再び 感じた。
この辺の表現を、どう解釈して良いのかが全くわからん。これ、面白い箇所なのか?ただただ意味不明なんだが。
p234
これまでも、彼は絶えずアマランタを追い求めてきたのだ。 占領した町や村の暗闇で、 そして 特に暗い寝室の中で、彼女の面影を思い浮かべた。負傷兵の包帯にこびりついた血の匂いに、死の危険に対する一瞬の恐怖のうちに、 つまり 四六時中、 至るところに彼女の存在をまざまざと感じたのだった。彼女の元を去ったのも、 ただ遠く離れるというだけでなく 、戦友たちが無謀とさえ 呼んだ 勇猛さを発揮することで 、その思い出を消し去るためだった。ところが ゴミ捨て場のような洗浄に彼女の面影を捨てようとすればするほど、 戦い そのものがアマランタに似ていった
山崎まさよしはこれを歌にしたのか?的な。
ちなみにこれの主語であるアウレリャノ・ホセはアマランタの甥。近親相姦の家系なんだね。ガルシアはこれが言いたかったために、この600ページを超える長編を書いたのかしら。
p258
誰にも、 ウルスラ にさえ、 3M 以内に近づくことを許さなかったのは その前後のことである。 行く先々で幕僚にチョークで描かせ、そこへは自分しか入ることを許さない輪の真ん中に立って、簡潔 だが反抗の余地のない命令によって 万事を思い通りに処理してった
ここの部分を抜いて「これが一族の孤独の例だ」という書評を読みました。確かに、大佐は病的なところがありましたね。
p357
しかし、小町娘のレメディオスがこの用心を知ったらお腹を抱えて笑ったに違いない。この地上にとどまっていた最後の瞬間まで 、男 心を狂わす女という、自分ではどうにもならない宿命が毎日のように悲劇を呼び起こしていたとは、露知らなかったのだ
ちょっとおもしろいんだよな、この小町娘のレメディオス。男心を無意識にただ狂わす女。最後はシーツといっしょに空へ飛んでいく。なんのこっちゃ。
p383
しかし 我が子に対する評価の肯定感はかえって 彼女の心に、当然といえば当然だが、深い 同情を不意に目覚めさせることになった。一方、 あれやこれや考えてあげく、その心の冷たさに呆れ、その激しい 苦しみようが彼女にとっても苦痛の種だった アマランタ が、実はこの世で最も心根の優しい 女であることを悟った。
人間の評価は見方一つでだいぶ変わる、つーことは実際にもよくある話で。それぞれがそれぞれの正義で生きている。
p616
だが死者たちの横行にはしばしば 夢を破られた。一族の地を絶やすまいとして自然の掟と戦う ウルスラ、偉大な文明の利器という夢を追い続ける ホセ・アルカディオ・ブエンディア、 ひたすら 神に祈る フェルナンダ、兵戦の夢と魚の金細工の中で呆けていくアウレリャノ・ブエンディア大佐、バカ騒ぎの中の孤独に苦しむ アウレリャノ・セグンド。彼らの声を まざまざと聞き、 激しい 執念は死よりも強いことを知った。現在、昆虫たちが人間から奪おうとしている惨めな楽園であるが、未来の別の種類の動物がそれを昆虫たちから奪った その後も、亡霊となって愛し続けるのだと確信することで、2人は幸福感を取り戻すことができた
ちょっとした回顧録というかまとめになっている文章。そうそう、そうだったね、という気持ちで読める。
しかし、変な物語でしたね。これを純粋に楽しめるというのは、相当に読書慣れしていて、かつ特殊な想像力がある方だと思いました。普段はまったく使わない、だから鍛えられていない、そんな読書筋肉を必要とする本でした。