青崎有吾著『地雷グリコ』感想 自由律ジャンケンに痺れる

世の中の人はイカサマ好きなのかしら。ライヤーゲームとかカイジとか麻雀マンガとか読むと、結構イカサマ記述あるけど、あたくしはあまりそそられない。

だから本著でも好きなパートは『地雷グリコ』と『自由律じゃんけん』、そして『だるまさんがかぞえた』ですね。

ミステリ界を席巻した、最高級の頭脳戦!

射守矢真兎。女子高生。勝負事に、やたらと強い。友人・鉱田と彼女が巻き込まれるのは、子供の遊びをモチーフにしたゲームの数々。罠の位置を読み合って階段を上ってゆく「地雷グリコ」、独自手を追加できるじゃんけん「自由律ジャンケン」、歩数とかけ声の文字数を入札できる「だるまさんがかぞえた」。強者を相手に、真兎は譲れないものをかけて勝負に挑む。彼女が負けられない理由とは――。心揺さぶる、最高級の頭脳戦。

だから、『坊主衰弱』とか『フォールームポーカー』とかには、それほどピンと来なかったです。

それを抜きにしても、確かに頭脳戦としてとても面白い。

地雷グリコ

位置: 206

 これは少し奇妙というか、念を入れすぎなルールに思えた。
「同じ手のあいこが五連続って、そんなことめったになくない?」
「いいえ鉱田さん。このゲームに関しては充分ありえます」

読者をゲームに引きずり込む力がすごい。ページを読む手をちょくちょく止めざるを得なくなります。「自分ならどうするかな」と読者への挑戦みたいなことをさせられます。場のちから、というべきか。本著にはそれがありますね。

位置: 367

「ず、ずいぶん意味ないことしますね」真兎は声をつっかえさせる。「八段目じゃ、ペナルティが二段分無駄に……」
「そうだな。だがそのかわり、おまえを スタート地点まで戻す ことができた。おまえはこれから、いままでと同じように 三の倍数のルート を上り始めるわけだ」

これね、ガツンとくるよね。そこまでは気が付かなかった。確かに、ハメるんだったら多少損をしてでも、スタート地点まで下げたほうがいい。すごく面白い展開。

でもこの後大逆転。そのロジックが、まぁ、なんというか、「偶然」の要素が強い気がしてはいます。

自由律ジャンケン

位置: 1,610

 佐分利錵子の目は、射守矢の右手に吸い寄せられていた。
「ジャン、ケン、ポン」の「ケン」のタイミングで、予想外の先出し。
 射守矢真兎が出したのは、〈銃〉 だった。

先出しOKというのが、まずは慧眼だよね。
それってありなのか?みたいな話だけど、自由律ならOKとのこと。それってもはやジャンケンではない気もするけど。

しかし虚を突くには間違いなく成功。

位置: 1,628

「あいこです」
 椚が宣言し、同時に射守矢の頰が、にいっと持ち上がった。佐分利にとってその笑みは、殴りたくなるような憎たらしさとキスしたくなるような魅力が同居していた。

そんな笑みあるか?と思うけど、面白い表現。

位置: 1,694

「ポン、っと」
  一瞬遅れて、 グー だった。
「第三ゲーム、勝者は佐分利会長です」
 椚先輩が宣言し、会長は手をひっこめる。生徒会コンビは涼しい顔をしていた。
「ちょ……ちょっと待ってくださいよ先輩、いまのルール違反じゃないですか? 会長、真兎より遅れてグー出しましたよ」
「問題ない」

心理戦にドキドキします。こういうのが読みたいんだよ。
主人公の追い込まれ方も、スリルがあって大変によろしいですね。

フォールーム・ポーカー

位置: 3,059

「三巻でね、 悟 空 とクリリンが修行を始める前に、師匠の 亀 仙人が言うの。武道を習得する目的はケンカに勝つためでもちやほやされるためでもない。『心身ともに健康になり、それによって生まれた余裕で人生を面白おかしくはりきって過ごす』ためじゃって。亀仙人はとぼけた人だけどわたしはこれって真理だと思った。

例えが紛れもなくアラフォーのそれ。ドラゴンボールの3巻を持ち出すなんて。

しかし、これは真理だとあたくしも思う。人間のやることというのはすべてこの「ゆとり」を得るためだ、という主張はかなり納得いきます。

位置: 3,442

勝負どころで取るべきなのは、先攻か、後攻か……あいつらはいま、それを必死に考えとんちゃうかな」
 火力重視の先攻と、情報重視の後攻。
 私にはない見方だった。

徹底的に素人然とした主人公。読者の味方であります。これぞ駆け引きで、悲しいくらいそれの苦手な読者たち。

位置: 3,657

『素数 ね』
 ──素数。
 2以上の自然数で、1とその数以外では割りきることのできない数。
「あ、そうか!」

数学の心得のないあたくしですが、これには気付きました。逆に言うとここまでが限界ですけどね。

位置: 4,292

「いや、最初から決めてたことだから。そのかわり絵空には、私の言うことをひとつ聞いてほしい」
「……何?」
 真兎はわたしの目を見据え、はっきりと言った。
「私と一緒に、鉱田ちゃんに謝るんだ」

これね。最後まで読んでも、「別にそこまで謝らないといけないことか?」と思いますけどね。まー褒められたことではないけど謝罪をされても。された方の身にもなれよ、という気持ちもします。別に勉強で負けたことは絵空のせいじゃないし、その責任は受験の主体である自分に被らせろよ、という感情は湧きません?

解説 小川哲

位置: 4,412

どうやら 青 崎 有 吾が『カイジ』や『噓喰い』や『LIAR GAME』みたいな、オリジナルゲームで勝負する頭脳戦ものの新刊を出すらしい。

やっぱり身も蓋もない言い方をすればそうなりますよね。たとえが抜群にわかりやすいよ。さすが小川先生。

位置: 4,500

「一般的なゲームにオリジナルルールを付加する」ことと「青春小説のフォーマットを使う」こと、そして「勝負を通じて相手を理解する」ことを物語の軸に据える──これこそが、「オリジナルゲームによる頭脳戦もの」という難しいコンセプトを達成するために、青崎有吾が用意した戦略だ。
 うーん、実に隙がない。

また解説も素晴らしく過不足ない。この上ない。まさに解説。解説にも隙がない。

投稿者 写楽斎ジョニー

都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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