ちょいと小噺!

染井為人著『悪い夏』感想 あっけらかんと悪い

福祉の分野についてはあたくしも一家言あるんでね。

第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作! 戦慄のノワールサスペンス

26歳の守は生活保護受給者のもとを回るケースワーカー。同僚が生活保護の打ち切りをチラつかせ、ケースの女性に肉体関係を迫っていると知った守は、真相を確かめようと女性の家を訪ねる。しかし、その出会いをきっかけに普通の世界から足を踏み外して――。生活保護を不正受給する小悪党、貧困にあえぐシングルマザー、東京進出を目論む地方ヤクザ。加速する負の連鎖が、守を凄絶な悲劇へ叩き堕とす! 第37回横溝ミステリ大賞優秀賞受賞作。

底抜けの悪人がいないのが、著者の好みなんでしょう。それぞれの正義でもって、やや悪いことをしている印象。

位置: 3,765

「あんた、不正受給を 蔑んでるんだろう。だから疲れるんだ。おれはちがう。不正受給を正しいと思ってる。不正だと思ってないんだ。いいか、今の日本の劣悪な就労環境で、自力で生計を立てろなんてのがまずおかしいと思わないか。底辺の人間が職に就いても得られる給与は生活保護より低いのが現実だろう。最低限の社会保障すらない。その現実に目をつむって、理想社会を説いてもそれはまやかしであり、ごまかしだ。つまり世間は、『生活保護を貰ってる奴らは、楽して金を得てずるい』ではなく、『一生懸命働いてるのに生活保護世帯よりも安い賃金しか貰えない社会はおかしい』と考えるべきなんだ。

世の中を「べき」で語るやつは、大概信用ならぬ。
他人様の領域まで自分の主義主張で踏み込もうとしているからね。「このほうが良いに決まってる」というのは欺瞞だよ。

とはいえ、この考え方に真面目に反論するならば、「精一杯働きながら、足りない分を生活保護費をもらう」という考えがないこと。彼の言う「底辺の仕事」につきながら生活保護をもらうこと、可能ですけどね。

小悪党が跋扈する世界で、もがく主人公という構図が面白い。全員少しずつネジが狂っていて、やや小悪党。巨悪がいないので絶望感も少ない。面白いですね。軽めのノワールエンターテイメント。すぐ読み切れます。

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