あれ!?と必ず思うはず。
そんな下巻ありかいな?
構想15年
ミステリ界のトップ・ランナーによる圧倒的な傑作登場!名探偵アティカス・ピュントのシリーズ最新作『カササギ殺人事件』の原稿を結末部分まで読み進めた編集者のわたしは激怒する。ミステリを読んでいて、こんなに腹立たしいことってある? いったい何が起きているの? 勤務先の《クローヴァーリーフ・ブックス》の上司に連絡がとれずに憤りを募らせるわたしを待っていたのは、予想もしない事態だった――。ミステリ界のトップ・ランナーが贈る、全ミステリファンへの最高のプレゼント。夢中になって読むこと間違いなし、これがミステリの面白さの原点!
叙述トリック、トリックでもないか、でもなんでしょ。
とにかく、本を間違えたかな?と思うような後半。こんなん、ありかい?
位置: 966
『滑降』を読んで、わたしはいろいろな意味で暗い気持ちにさせられた。これまで八作もの大人気小説――アティカス・ピュントのシリーズ――を世に送り出し、喝采を浴びてきた作家が、どうして最後にはこんなにも憎しみに満ちた作品に行きついてしまったのだろう?
つい斜に構えた己の視点が面白かろうとなって、毒舌と悪口の間の作品を生み出してしまうのは、まぁ、ひねくれた作家ならあるあるでしょう。そしてそれを物語の悲哀にしてしまうところが、このアンソニーホロビッツ氏の恐ろしいところ。何もそんなに露悪的にならなくても。
位置: 970
文体も痛々しいまでに独創性を欠き、どこかでこんなものを読んだ記憶はあるものの、それが誰だったかもはっきりとは思い出せない。どの行にも、どんな醜い比喩にも、いかにも効果をねらって必死にひねり出したわざとらしさがつきまとう。
わざとらしさ、ってのは大敵ですね。落語もミステリーも。
恐ろしい。
位置: 1,274
考えてみると奇妙な話ではないか。本でも、テレビでも、数えきれないほどの人間が殺されている。人を殺さない物語など、なかなか成立しえないほどに。わたしたちはなぜ、こんなにも人が殺される謎を求め、そういった物語に惹かれるのか――殺人という罪に、それとも解決に惹かれているのだろうか? あまりに安全で居心地のいい暮らしを送っているからこそ、原始的な欲求として流血 沙汰 を望むのだろうか。ホンジュラスのサン・ペドロ・スーラ(世界でもっとも殺人事件の発生率が高い都市)でアランの本がどれほど売れているのか、後で調べてみよう。
そして筆者も皮肉に走る。自虐、そして妙な悟りへ。
才能というのは求める者のところに行くとは限らない、というよくある悲しい真理のお話ですね。
位置: 1,805
マシューの言うとおりだ。『カササギ殺人事件』にも、アガサ・クリスティへのひそかなオマージュが、少なくとも五、六ヵ所はちりばめられている。たとえば、サー・マグナス・パイとその妻がサン゠ジャン゠カップ゠フェラで泊まっていたのは、《オテル・ジェヌヴィエーヴ》だけれど、『ゴルフ場殺人事件』にはこれと同じ名のホテルが登場する。ブリストルでロバート・ブラキストンが喧嘩に巻きこまれた《青蛇》亭は、ミス・マープルの住むセント・メアリ・ミードの酒場だ。レディ・パイとジャック・ダートフォードは《カーロッタズ》で昼食をとっている。これは、『エッジウェア卿の死』に登場する米国人女優の名前からとったものではないだろうか。第四部1章には、ちょっとした冗談も出てくる。パディントン駅三時五十分発の列車に乗ったフレイザーが、死んだ乗客に気づかなかった話は、もちろん『パディントン発4時 50 分』を意識したものだろう。ブラキストン一家はシェパード農場に住んでいた。『アクロイド殺害事件』の語り手はジェイムズ・シェパード医師で、物語の舞台はキングズ・アボットだ。第四部7章を見れば、レナード老医師が葬られたのは、まさにその名の村となっている。
アクロイドの件と青蛇亭しか分からなかったですね。
しかしこういうのは自分から言っちゃ野暮なやつですよね、本当はね。
位置: 1,816
ば、『カササギ殺人事件』の筋立てに古い 童歌 が使われているのも、明らかにクリスティが何度となく使った技法をなぞったものだろう。クリスティは童歌が好きだった。「一、二、わたしの靴の留金締めて」(『愛国殺人』)や、「五匹の子豚」(題名同じ)、「十人の小さなインディアン」(『そして誰もいなくなった』)、「ヒッコリー・ディッコリー・ドック」(『ヒッコリー・ロードの殺人』)――こうした歌が、みな使われてきたのだ。
これもそうか。『悪魔の手毬唄』もオマージュの一つかしらん。
位置: 2,799
「ぼくが育ったのは、ワイト島のヴェントナーってところでね。つくづく大嫌いでしたよ。最初は、あそこが島だから、周りを海に囲まれているから嫌いなんだと思ってました。でも、実のところ、ぼくがこういう人間だからこそ、好きになれなかったということなんだろうな。おやじもおふくろも、《エホバの証人》の信者でね。おふくろはいつも、島じゅうの家に《ものみの塔》を配りあるいてました」ジェイムズは言葉を切った。「おふくろがいちばん動揺するのは、どんなときだったと思います? 配る家が見つからないときですよ」
そして過去のトラウマの告白。
別にそんなのはどうでもいいんですけどね。
しかしクライマックスに向かうにつれ、こういう足場は大事。犯人が立体的になるからね。
位置: 3,257
「よくもまあ、そんなことを!」
「どうしていけない? アラン・コンウェイはきみのことを笑ってたんだ、スーザン。ほかの誰のこともね。文学のことなら、ぼくにだってわかってるさ。いいか、これでもぼくはホメーロスを教えているんだ。アイスキュロスもね。アランだって、そうした本の価値はわかっていたはずだ――自分の作品と引き比べてね。あんなものは、下手くそな紙くずさ!」
「わたしは、そうは思わないわ。あのシリーズは、どれもよく書けているもの。何百万人もの読者が楽しんでいる本なのに」
「あんなものに価値などないね! 八万語を費やして、結局は執事が犯人でした、なんて話にすぎないじゃないか」
「鼻持ちならない教養主義者みたいなことを言わない
ま、結局、ミステリってそういうもんですからね。
「犯人がわかったからってどうなんだ」と言われたら最後。
でも、だからこそ、尊いんだけどな。分かる人に分かれば良くて、だからこそ最高の趣味。
4,338
「アティカス・ピュント」
「そう、Atticus Pündのアナグラムを解くと、その答えは 馬鹿 ま ん……」 この最後の言葉を書かずにおくことを、どうか許してほしい。
このアナグラムってやつ、時々西欧のやつに出てきますが、あたくしはそんなにときめかないんですよね。アルファベットに対してさほど思い入れがないからか。必然性が薄いからか。それにしても、a stupid cuntだそうですよ、奥さん。なんのことでしょうね。
位置: 4,428
これがカインの呪いなのか――陽の当たる場所から追いやられ、さまよいながら逃げつづける運命。どう正当化しようとも、チャールズはアランを塔の上から突き落とした瞬間、自分に残っていた人間らしさすべてに別れを告げてしまったのだ。
カインというとあたくしはすぐFFⅣになってしまうんですが、ようは殺人者ってことでさあね。嫉妬の象徴ってことですな。
位置: 5,320
本書『カササギ殺人事件』は、アンソニー・ホロヴィッツがYA向け以外で初めて書いたオリジナル・ミステリだ。幼い頃から物語世界に救いを求めて読書にふけり、作家をめざし、《女王陛下の少年スパイ! アレックス》シリーズを始め数々のYAミステリのヒット・シリーズを生み出し、「刑事フォイル」や「名探偵ポワロ」の脚本家として腕を振るい、コナン・ドイル財団とイアン・フレミング財団から公式認定を受けて、それぞれ『シャーロック・ホームズ――絹の家』と『モリアーティ』、『007――逆襲のトリガー』と Forever and a Day という、恐ろしく完成度の高い続編をものしてきたアンソニー・ホロヴィッツ。
コナン・ドイル財団とイアン・フレミング財団の公認でモリアーティと007を書くってんだからすごい。ほんとうにすごい人なんだな、ホロヴィッツ。
ミステリの精度という点では★3つですが、エンタメとしてのクオリティが高い!すごい作品ですね。
