八目迷著『夏へのトンネル、さよならの出口』感想 読みやすくて恥ずかしい良いラノベ

夏への扉へのオマージュタイトルかしら。あれ、好きな人多いよね。
個人的にはそこまでか?という気がするけど。

時空を超えるトンネルに挑む少年と少女の夏。

「ウラシマトンネルって、知ってる? そのトンネルに入ったら、欲しいものがなんでも手に入るの」
「なんでも?」
「なんでも。でもね、ウラシマトンネルはただでは帰してくれなくて――」
海に面する田舎町・香崎。
夏の日のある朝、高二の塔野カオルは、『ウラシマトンネル』という都市伝説を耳にした。
それは、中に入れば年を取る代わりに欲しいものがなんでも手に入るというお伽噺のようなトンネルだった。
その日の夜、カオルは偶然にも『ウラシマトンネル』らしきトンネルを発見する。
最愛の妹・カレンを五年前に事故で亡くした彼は、トンネルを前に、あることを思いつく。
――『ウラシマトンネル』に入れば、カレンを取り戻せるかもしれない。
放課後に一人でトンネルの検証を開始したカオルだったが、そんな彼の後をこっそりとつける人物がいた。
転校生の花城あんず。クラスでは浮いた存在になっている彼女は、カオルに興味を持つ。
二人は互いの欲しいものを手に入れるために協力関係を結ぶのだが……。
優しさと切なさに満ちたひと夏の青春を繊細な筆致で描き、第13回小学館ライトノベル大賞のガガガ賞と審査員特別賞のW受賞を果たした話題作。

夏の匂いの漂う、ひたすら読みやすいラノベ。

位置: 342
「死んだのがお前だったらなぁ」
中学二年の冬の夜だった。泥酔して帰ってきた父さんは「今日は冷えるなぁ」と同じくらい自然にそう漏らした。

お父さん、泥酔してそういうこと言っちゃ駄目よ。

位置: 348
僕は母さんとその浮気相手の間にできた子供だった。
僕が八歳の 頃 に発覚した事実だ。

そういう設定を重ねると、たしかにウラシマトンネル入る自暴自棄ぷりに説明はつく。つくけど、さぁ。

位置: 1,776
まったく変わらない。
そういえば、気になっていたことがある。
花城は、なんのためにウラシマトンネルに入るのだろう。
この数日間で花城とは幾度も言葉を交わしてきた。でも、彼女が何を求めてウラシマトンネルに入るのか、僕は知らない。別にものすごく気になるわけでもないけど、互いの情報が共有されていないと後の探索に支障をきたす恐れがある。今日、ウラシマトンネルを出たときにでも 訊いてみたほうがいいかもしれない。

ヒロインの動機に謎を置く、って古典的だけど面白いよね。ヒロインが魅力的であればあるほど。

位置: 3,210
「それと……ごめん。早速なんだけどさ」
また恥ずかしいことを言ってしまうであろう自分に、僕は思わず苦笑した。 「少し、 誰 かを愛したくなっちゃったよ」

はっず。やはり良きラノベよ。
ヒロインと謎の共犯関係とか、萌えるよね。

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