西村賢太著『二度はゆけぬ町の地図』感想 なぜ、おれは、飽きないのだ

いっかな飽きが来ない。なんでだ。温暖化か?

中卒で家を出て以来、住み処を転々とし、日当仕事で糊口を凌いでいた17歳の北町貫多に一条の光が射した。夢想の日々と決別し、正式に女性とつきあうことになったのだ。人並みの男女交際をなし得るため、労働意欲に火のついた貫多は、月払いの酒屋の仕事に就く。だが、やがて貫多は店主の好意に反し前借り、遅刻、無断欠勤におよび……。(「貧窶の沼」より)夢想と買淫、逆恨みと後悔の青春の日々を描く私小説集。

どうして、同じような物語に、こんなに惹きつけられるのか。不思議。「貧窶の沼」「春は青いバスに乗って」「潰走」「腋臭風呂」の4つを収録。どれも似たような話ではあるのだ。しかし、妙に、読ませる。筆の力なのか、根が貫多好きに出来すぎているのか。

位置: 1,005
そんななか、バスが 言問橋 だろうか、あの辺の橋にさしかかって渡ったとき、ふいと隅田公園の桜が目にとび込んできた。
鈍色 の川の背後にひろがる蒼い薄闇の中に、満開の桜の華やかな色が浮き彫りとなり、いくつもの提灯は妖しく灯って風に揺れ、そこからは花見の人々の高揚ぶりが立ちのぼっているかのようだった。

春は青いバスに乗って、の一文。なんだかぐっと来ちゃった。

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