引っ越しをいくども乗り越える勇者

引っ越しを考えています。
今までは2DKだったのですが、手狭になり、また、客室も欲しいという話にあり、一気に3LDKの部屋を借りることにしました。
とんとん拍子で話が進み、たまたま近所にいい物件があったので、そこに決定。
家賃は少し弾みましたが、それでも納得の3LDKです。

3LDKといえば、普通の家庭が住むにしてもそこそこの部屋。
まさかそこに、31のあたくしが、家族を連れて住むことになるとは。
お釈迦様でも気がつくめぇ。なんてね。

引っ越しの準備をしていると、意外なことに気づくものです。
昔の卒アルを読んだり、昔の本を読み返してみたり。
かつての恋人の文なんぞを見つけて妻と気まずい気分になるのも、ご愛嬌でしょう。

そんな中、あたくしはふと気づいたのです。
のほほんという顔で、いくども引っ越しを乗り越えている猛者が、この家にはいくらでもいるということに。

人形のエルモ、小さめのスチールラック、ぐい呑み、高校生の時に買ったヘッドフォン……。
いくども捨てられそうになりながら、それでも捨てられずに生き残った奴らたちです。
あいつら、本当にしぶとい。

他の良い物があったとしても、とりあえず「壊れるまでだから」なんつって使い続けちゃったりして。
思い入れの問題かと思うけれども、そんなに思い入れのないものも混じっていたりするんですよね。
スチールラックとか、何の感慨もないのに。

それでも残るあいつらを、あたくしは尊敬します。
自分も、あんなふうに、居たいものだと思わざるを得ません。

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