そういわれると、半生を振り返ってとてもいたたまれない気持ちになるんですけどね。
江戸は品川、清洲亭。大工の秀八が始めた寄席はお客もついて順風満帆。本日も開業中。常連の真打・弁慶がトリを務めていた時、清洲亭の周りに幽霊が出没!? 気味悪がるおえいだが、その正体は弁慶への弟子入り志願の男だった。頑なに弟子を取らない弁慶の切ない理由とは。一方、乗り込んできた女義太夫がひと悶着を起こし―。芸を愛し、人のために尽くす。人の情けが身に染みるシリーズ第二弾。
一巻を読んだら、もう止まらない。とりあえず既刊分はすべて読みました。感想をぼちぼちと。時代小説だと、こういうクサい話もすんなり読めるんだよね。ワンクッション挟むからかな。
第一話 変わらぬ名前で出ています
位置: 144
〈助六由縁江戸桜〉。 花川戸 の助六、実ハ 曽我五郎 といえば、 成田屋 がよくやる 伊達男、お芝居の人気者だ。その恋人と言えば……。
「なんだ、それくらいならあたしだって知ってるよ、 総角 花魁 じゃないか」
「な、だからさ、あげとまき。揚げ寿司と巻き寿司だからさ」
これは有名な話。これを助六と呼ぶあたり、若干のペダンティズムというか、粋さを感じます。日本人だなーと思うよね。
位置: 560
芝居の〈勧進帳〉の弁慶は、何も書いてない白紙の巻紙を広げて、さもその中に普請したい寺や橋のありがたい 謂 われが書いてあるかのように読み上げる。
この辺を知っていると知らないとじゃ、物語の楽しみ方が全然違ってくる。あたくしも全然詳しくないけど、このレベルなら分かる。これ以上になると分からない。
位置: 1,230
佐平次がにやにやと語ったところによると、佐平次は浅田屋の宗助と、「六月の清洲亭の一番大入りの数」を賭けることにしたらしい。
「八十より多かったらおれの勝ち。少なかったら浅田屋の勝ち。おれが負けたら、例の講釈師の先生方を思う存分、島崎楼でタダで遊ばせる。向こうが負けたら、この根付けを全部、庄助さんの証文ごと、おれに譲る、ってな」
――つくづく、喰えないお人だ。
この佐平次がなかなかいいんだよね。善人でも悪人でもない。人間臭くって良い。この理想主義的な時代小説において、ひときわ異色を放っているといっても良いでしょう。
佐平次が女郎宿の主人、って設定もまた、既成概念の真反対でいい感じ。