松本大洋『ピンポン』の原作とアニメの差を考える

ついにアニメが終了……

 最高でしたね、アニメ『ピンポン』。湯浅監督ということで、『四畳半神話大系』が人生ベストアニメのあたくしにとっては当然に期待大でしたが、想像どおりの大傑作でした。
 最初『ピンポン』アニメ化!と聞いて若干不安でしたよ、正直。だって原作が好きすぎるんですもの。好きすぎる作品が映画化してガッカリした経験は数知れず。
 例えば映画『ピンポン』ではこの『ピンポン』の持つ魅力の半分も出せていなかったように思います。三世紀早かったです、映画化するの。
 映画『青い春』は良かったですね。あれは面白かった。映画も。

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どこが原作と違ったか

 さて、ピンポンです。どこが違ったかと言われれば、3つ。

  • ゆりえちゃん
  • コンさん
  • アクマに子どもが!!

でしょう。

ゆりえちゃん問題

 ドラゴンの彼女?的な存在です。原作にはありえなかったですな。
 また、ドラゴンの叔父やパパの存在も原作にはなかったはずですな。ドラゴン祖父はポセイドンという大手卓球用具メーカーの社長で登場しました。タムラのオババ、バタフライジョーと共に往年の名選手だったということ。
 また、ドラゴンの叔父が海王学園の顧問になっていましたね。
 これらドラゴンの血族や交友関係が明らかになることで、皮肉なことにドラゴンの孤独さが際立つことに。クリスマスの演出とか、完璧でしたね。勝者ほど、孤独であるという皮肉。すげぇ演出です。
 また海王が一枚岩でないことも浮き彫りになりました。危機感をもって、使命感で戦っているのは実はドラゴンだけだったってオチですな。ドラゴンに哀愁を感じずには居られません。

pingpong2

コンさん問題

 コンさんにも家族が出てきます。ママです。原作ではほとんど当て馬にしかならなかったコンさん。涙なしには見られない悲しいキャラクターでしたが、ママの登場により温かみのあるキャラクターにグッと寄ります。
 びっくりしたのは最後。え?帰化したの?しかも風間より上手くなって?
 湯浅監督、ここで大逆転をさせますか。想像だにしなかった。

kong

アクマ問題

 これは最後だけ。ほとんどアクマは原作通りですが、確か原作だと最後は「結婚する」だったはず。けれどアニメでは「3人目の子供が出来た」に!?おいおい最高の勝ち組じゃんか。

akuma

アクマやコンにスポットライトを当て、ドラゴンを身近にさせる

 これら原作にないことをやって、何が効果的かってぇと、まずはキャラクターに深みが出ますよね。
 当て馬に過ぎなかったコンを「試合に負けて勝負に勝った」ようにし、最後はドラゴンを押しのけて代表入りさせました。高校時代の負けを、大人になって昇華させていることになります。
 また、アクマが幸せな家庭を順調に築き上げている様をより明確にし、『競争原理から離れることで見える景色』を明確にしました。
 これらで、グッとピンポンの解釈が変わって来るんじゃないですか。多分映画版は、このアニメ版が出てから作られたら違った解釈になったはずだと思います。

 原作を越えられないどころか、原作をより読みたくさせた、最高ランクのアニメ化成功だと思います。ブルーレイボックス買おうかしら…。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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