古典中の古典。
ちなみに、何度も「せいそう」と読んでしまう。「そうじょう」が正しい。でも、ぶっちゃけ「ビショップ殺人事件」って言ってもらったほうが馴染む。僧正なんてビショップ同等かそれ以上に馴染みがない。
一 誰が殺した、コック・ロビン
位置: 228
誰が殺した、コック・ロビン
それは私よ、雀が言った
私の弓と、私の矢にて
私が殺した、コック・ロビン
どうしてもこれになってしまう。それくらい、日本人にはマザー・グースは馴染みがない。やっぱり日本でやるなら、獄門島みたいに手毬唄か、俳句になぞらえたほうが面白かろう。
二 アーチェリー場
位置: 273
姪のベル、当時十五歳を引き取って、一緒に暮らしている。今は二十五歳だね。それから、 愛弟子 のシグルド・アルネソンがいる。たまたま、私の大学時代の同級でね。小さいころに、教授の養子になった。今は四十くらいで、コロンビア大学の数学講師をしている。
もう嫌な予感しかしない。ベルを巡る色恋に混ざって殺人起きるんだろうなーという。正解なんだけどね。
十二 深夜の訪問
位置: 2,481
「ドラッカー夫人には、もちろん説明したのですよね」
「何度も話したんですがね、まったく聞き入れてくれません。倒錯した殉教精神で、自分に責任があるという考えに取り憑かれているのです。間違った考えのまま、 固定観念 にまでなってしまったのですね。あの人の頭の中は、この固定観念に支配されてしまい、四十年にも及ぶ奉仕と犠牲の生活に意義を見いだしているわけです」
この辺、妙に面白いんだよね。奉仕と犠牲の生活に意義を見出しちゃった人。あたくしも仕事で関わったことあるわ。
二十 ネメシス
位置: 4,195
「アルネソンに分析してもらったおかげで、パーディーに四十五分くらい、どこかに行っていられる時間があったことが分かったんだよ」
後出しジャンケンは、やや卑怯でもあるので、効果的に使わないとね。
二十一 数字と殺人
位置: 4,373
「パーディーはどうして、アルネソンの僧正を持っていったんだろう。チェス・クラブにあるのを持ってくれば、誰も気づかなかったかも知れないのに」 「それを推測するだけの材料はまだないね。何か必然的な理由があったのかも知れない……
撒き餌をするなぁ。
二十二 トランプの家
位置: 4,575
「あまりにも分かりやすすぎる……簡単すぎるよ。一見もっともらしい結末だけどね、どうも満足できない。卓越したユーモアを繰り出してきた僧正が、こんな陳腐な終結で満足するものだろうか。
しっかりと犯人像を認識しつつ。
二十三 衝撃
位置: 4,749
言った。「解決したのは、警察でも僕らでもない。二十年も前に死んだ、ノルウェーの劇作家なんだ。イプセンの作品の中に、事件の鍵があったんだよ」
結局、イプセンの劇の中に、正解がある。
しかしこれは全く本格ではない。物語として面白いかもしれないけど、イプセン知らなきゃ解けない謎。
二十四 最後の幕
位置: 4,915
すさまじい勢いでドアに体をぶつける。木がギーギーと音をたて、板が少し曲がったものの、鍵は外れなかった。
マーカムが飛び出してきて羽交い締めにする。
「気が狂ったのか……法律違反だ」
「法律だと?」ヴァンスはばかにするような声で切り返す。「相手は法律なんてせせら笑っているやつだ。そんなやつを大事にしたいのか? どうあっても、この屋根裏部屋を捜索する。たとえこれから一生刑務所暮らしになるとしてもだ……巡査部長、開けてくれ」
探偵が法律違反を犯すシーン。
スマートじゃない、からこそ効果的なんだろうけど。
二十六 ヒースの疑問
位置: 5,465
ディラード教授のような化け物を、あの世に送る手を貸しただけだ。何の良心の呵責も感じないね。毒蛇をたたきつぶしたようなものだ」
「だが、これは殺人だ!」マーカムが恐ろしい顔で怒鳴る。 「確かにね」ヴァンスは愉しそうだ。「そうだよ。言語道断だ……もしかして、僕は逮捕されるのかな?」
終わり方は余韻があって好き。
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