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まずタイトルが相当に秀逸。小説版は「ふんぬ」が正しい。映画は逆に「ふんど」らしい。
東京地検のエリート検事・杜丘冬人は、新宿の雑踏で突然、見知らぬ女性から強盗殺人犯だと指弾される。濡れ衣を着せられたその日から、地獄の逃亡生活が始まる。警視庁捜査一課・矢村警部の追跡は執拗だった。杜丘は真相を求めて能登から北海道へ、そしてまた東京へ。自分を罠に陥れたのは誰なのか。滾るような憤怒を裡に、警察の大規模捜査網をかわし、謎を追い求め続ける。
ハードロマンの代名詞的存在にして著者の記念碑的出世作。
1976年、佐藤純彌監督によって高倉健主演で映画化された。この作品は1979年に『追捕』のタイトルで中国でも公開され、観客動員数8億人を超える大ヒットを記録した。
中国で大ヒットだとか。面白い現象。高倉健は中国でもこれで有名らしい。
突き抜けるようなスリルとテンポのいいストーリー!の部分もあれば、しっかりとダレるところもある。そして終わりはあっけない。謎の部分についてはこじつけ感はありますが、この物語の肝はそこではない、と踏み切れれば面白いと思います。
タバコの煙うんぬんは、ちょっと謎の推進力としては弱いんじゃないかな。
位置: 2,151
「やめて! おねがいだから!」
耐えかねて、真由美が泣いた。
「やめんか、縁起でもない」遠波は真由美の肩を抱いた。「男には、死に向かって飛ぶことも必要なときがあるのだ。とくに、いまの杜丘君にはな。夜空も征服できん男に明日はない。では行きたまえ」
笑うしかないよね、昭和の雰囲気だ。冒険に出る男と、それを止めようとする女。そしてそれを遮る理解者。
位置: 2,912
麻薬の中ではヘロインやモルヒネと並ぶコカインだが、中毒症状のはてに小動物の幻影をみるという点で、コカインはその無残さを際だたせていた。寝床の中に、食卓に、壁に、ありとあらゆるところに蛇やサソリ、クモ、蛙などが這いはじめるのである。
ブラックジャックで観たような気がする。
位置: 3,325
ツグミと猿がアトロピンではなくコカインによる幻覚をみたのだと解ければ、武川、ツグミ、猿、そして殺害のキーワードは コカイン だとなる。
──だが、それなら、羆はどうする?
羆がコカインを、などとは、とうてい考えられない。
杜丘が知らずに触れていた犯行の傷口──
羆がどうのこうの、っての、最後まで理解できなかった。こじつけ?羆が人間に飼われているみたいな描写もあったんだけど、どういうことだったんだろう。最後まで謎だった。
位置: 3,656
杜丘は便所をみた。セメントの四角い穴があいているだけの便器の底には、つねに逆流してくる汚水が溜まっていた。その水をアルマイトのコップで 汲んだ。悪臭が鼻をついた。看護人が薬を飲ませ、口の中を調べて去ってすぐ、杜丘はその汚水を、目をつぶって飲んだ。
これは本作の最もエモいシーンです。読んでて震えた。
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