コテコテの恋愛小説。あんまり好きじゃない。
『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』から7年ぶりの2作目。
期待していなかった日常を変えた、出会いと別れの物語。人生でいちばん好きな人となら、幸せになれますか?
不倫と仕事に一生懸命なパラリーガル、初恋の相手の同棲を続けるスタイリスト、夫の朝帰りに悩む結婚3年目の妻……。誰かを大切に想うほど淋しさが募る日常は、予想外の”事件”をきっかけに一変する。
自分で選んだはずの関係に、どこで決着をつけるのか?
素直になる勇気を得て、新しい人生を踏み出す6人の軌跡を描いた恋愛小説。
好みの問題ですけどね。
ただ、本作についてはちょっとミステリ要素もあって、誰が誰とどういう関係なのかをつなぐ楽しみはありましたね。ただ、それだけのエンタメでしたけど。
位置: 54
冬至が一年でいちばん早く日が暮れる。子どもの頃にそう教えられた記憶があった。だけど実際は 11 月末から 12 月頭の方が、太陽は早い時間に沈んでしまうのだ。地動説のように絶対だと信じてきたルールは、間違っていた。
そうなん?!と思ったら、ちゃんと解説があった。
日の暮れが一番早い≠昼が一番短い なんだね。
位置: 1,101
だが、くらげは、逆だった。「引く」ことで、自分を動かす。
自分の目の前に圧力の低い領域を作ることで、自分を前進させているという。だからこんなにも自然なのか。無駄な肩の力も、鼻息も、脚の踏ん張りもない。
くらげになりたいと、青子は思った。
くらげは死ぬと、水に溶けて跡形もなく消える。この1万匹の中で、いま、消えゆく姿があるのかもしれない。それに気づくことは誰にもできない。
日本海に次々と音もなく消えていく雪を、青子はくらげの姿に重ねていた。
理想ではあります。
位置: 1,910
そこまで父に執着する理由が、今夜わかったような気がした。浮気なんてズルいことをしているくせに、なぜか憎めない気がするのだ。
姉は父が大好きだったから、大嫌いになるしかなかった。
男の誠実さを伝えるものはなんだろうか。そんなにカッコよくはない顔だろうか。重厚な体軀か、話し方か。家族を捨てた男にも、誠実さを感じるのはなんでなのか。ひかりがぼんやり考えていると、玄関の鍵を回す音がした。
永遠に分からんが、たしかにそういうところはありますね。女性も、当然男性も、そこには永遠に分からない。
位置: 2,021
母の弱々しいビンタよりも「人様から奪ったもので自分を満たして、それで知歌は恥ずかしくないのか」と泣かれたことがいちばん応える。
厳しい一言。
位置: 2,071
「なんか妙に納得もできちゃって。そりゃ辛かったよねって。関戸はどっかに救いを求めざるを得なかったんだろうなって」
夫の浮気がありえないことでもなかった。ある種の見切りが青子にもあったということか。浮気相手の女を「どっか」と言い捨て、あくまで夫婦の問題として考えたいという、妻としての強い意思が表れている。
「青子は逃げないから強いね」
あらゆる負の感情に溺れそうになりながら、必死に辿り着いた岸辺は自省なのだ。ヨウの言葉に、青子はちょっとだけ唇の両端を上げてみせた。女優の顎には似つかわしくない大きなニキビが、いくつも膿んでいる。
うむ。言葉の端々に意識がみえかくれしている。
位置: 2,079
不倫が罪なのは、ふたりでは完結しないからだ。どんなに狡猾な言い訳を並べても、過失の浮気など存在しない。愛する人から「傷つけてもいい」と心の片隅で思われていたという事実は、裏切り以上に深い傷となる。
間違いないね。
位置: 2,934
「関戸さんが離婚されるなんてありえません!」
さ・れ・る? 浮気相手に妻が断言される不毛感。こんな会話になんの意味があるのか。ふたりの女に納得のいく解なんて、あるわけがないのだ。
尊敬語かもよ?
位置: 3,035
「わたしではなく、息子さんと話すのが筋じゃないですか? 莉里のことはうちの話です」
そう言い残して、莉里の母親は席を立ち、そのまま店を出ていった。
母は強い。結構こういうところ、現実にあるよね。頭の中がお花畑になった人間には、堪える一言。
位置: 3,043
義息と話すのが筋。
美智子にはそれを否定する言葉が見当たらない。筋違いな女のくせに、それだけは道理が通っている気がして、やりきれないまま店を後にした。
わかりますw
位置: 3,095
知歌を否定したところで、自分を肯定できるわけじゃない。たとえ偽善だろうが痩せ我慢だろうが、嫌悪する感情に囚われるよりはよっぽどいい。残りの人生、赤ちゃんを見るたびに心が疼くような生き方はできない。
しんどいところね。
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