どうも感性が合わない。
泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場――。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。
淡々と話が進むわりに、あんまり面白さが突き抜けないイメージの伊坂幸太郎作品。今回もその経験に反することは出来ず。
ただ、読書好きの間で人気が高いのは事実。あたくしの感受性の問題なんだろうなぁ。
位置: 86
「コルトレーンの名演だ。Lush Life。豊潤な人生。
へぇ。
いい曲。
位置: 2,504
で、その彼が、時々、『カカシ』の話をしてくれたんだ」
「カカシ?」
「喋るカカシの話だ。彼はそれに会ったと言うんだ」
黒澤は愉快そうにくっくっと声を 洩らし、「 比喩 か」と言った。
「たぶん比喩だろうね。その喋るカカシはすべてを見通して、いつも皆を見守っている、と彼は言うんだ。
オーデュボンの祈り、ですね。
デビュー作だったかな。これ以上のものは彼の作品ではいまだ知らない。
位置: 4,705
「本心を言え」戸田の太い声が響く。志奈子は、戸田に押し 潰されるような気がしてならなかった。
「私が金で買えなければ、おまえの勝ちでいい。俺が勝ったら、おまえには言うことを聞いてもらわないとな」
志奈子はほとんど泣き出しそうになりながら、「わたしは今でも、戸田さんの言うことは聞いていますが」と言ってみる。
「私が、おまえにさせたいことはこんなものじゃない。ありとあらゆること 全てだ」
この戸田という男。いい。
悪役として、申し分ない。
しかし、この戸田以外の登場人物について、なにも思うところはなかった。
寓話って、やっぱり読む側の解像・解析力を問いますからね。あんまりピンとこなかったなぁ。あんまりそれぞれの話が結合した気にもなれなかったしね。単なる短編が4つ、交互に出てくるだけな印象。
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