『わが母なるロージー』感想 久々のカミーユ 1

またピエール・ルメートル読もうと思いまして。
どーせなら熱狂したヴェルーヴェンシリーズにいこうと。

『その女アレックス』のカミーユ警部、再登場
パリのあちこちに仕掛けられた七つの爆弾。犯人だと出頭した青年の狙いは何か? カミーユ警部と富豪刑事ルイが奔走する番外編。

物言いがどこか皮肉でいいんですよね。
橘さんの翻訳も馴染みます。

位置: 202
カミーユは家でも車のなかでも音楽をかけない。思考の妨げになるからだが、説明が面倒なので、周囲にはただ「嫌いなんだ」と言ってある。まあ、説明はそれに尽きる。好きならCDを買うだろうし、聴くだろうが、彼は一度もそうしたことがないのだから。もちろん周囲はそう聞くとまず、音楽が嫌い? そんなの噓だろ? と訊き返し、カミーユにもう一度「嫌いなんだ」と言わせ、そのうえで腰を抜かしてみせる。信じられないよ、絵や本ならまだわかるけど、音楽が嫌いだなんて! するとカミーユはますます音楽に対する嫌悪感をあらわにする。

あたくしも基本的に音楽聞かないので、結構わかりみ。
逆に思考したくないとき、例えばランニング中とか、は音楽かけます。筋トレ中とかね。
しかし音楽嫌いに対するプレッシャーすごいよね。フランスでも一緒なんだな。

位置: 416
それにもかかわらず、ルイはパリ警視庁犯罪捜査部の刑事になった。要するに、根はロマンチストなのだ。

この物言いよ。
行間が詰まってるな。

位置: 618
ルイが要点をまとめた資料を配った。 早業 で仕上げたものだが、簡潔で、正確で、問題が掘り下げられていて、要するに申し分ない。

いいよね、「○○で○○で〇〇で、要するに申し分ない」ってね。リズミカル。

位置: 697
テロに関しては警察が動きやすいようにさまざまな法律が用意されていて、それを駆使すれば、本来四十八時間が限度の警察留置も一世紀くらい続けられる。

皮肉な感じ。

位置: 769
するとロージーはあきらめたふりをしたが、ひそかに不満を募らせ、そしてある晩、夜勤明けでスーパーから帰宅するカロルを車ではねた。即死だった。きみのカロルは子供時代を過ごしたアルザスに戻りたがっていたが、いまではパンタンの墓地に眠っている。

こんなこと、面と向かって言える?日本だったら批判されるな。

位置: 933
母親は息子の恋人を殺し、息子は母親を救い出そうと爆弾テロを計画した。この二点だけでもつじつまが合わない。

全くだよ。

あとがきにも書いてありましたが母子関係というのがシリーズの一つのテーマかもしれません。カミーユは母から絵の才能と低身長をもらった。これは業とも言えます。それとどう折り合いをつけていくか。

こんな身体に生まれたくなかった、と思う人は多いでしょうけどね。どう自分の中で折り合いをつけていくか、結構人生の大きなテーマだと思いますね。

位置: 1,189
野党が怒りの熱弁をふるい、説明を要求し、議会を掌握する。「なんです、たったひとりの男の脅しに屈して国全体が窮地に陥った? そんなばかな!」大統領も以前なら、まだ野党の立場だったときなら、この状況を歓迎しただろう。「政府はこの国の子供たちの安全も守れないんですか」「たったひとりのテロリストに屈する政府なんか要りませんよ!」「恥を知れ!」。新聞にも《いまの政府は無能なうえに腰抜け》といった文字が躍るに違いない。大統領も以前はこうした言い回しが大好きだった。自分がそれを口にできたころは。

大統領も大変だ。こういう小説の政治家ってのはだいたい愚かと相場が決まってますけどね。保身にしか興味がなく、現場のことは二の次三の次で。

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