この橋本治さんという方、正直、胡散臭いと思っていました。かつてはね。
『桃尻語訳 枕草子』なんて出してね。古典の良さが台無し!なんて若いのに老害ぶった印象を持ったりしてたもんです。
しかし、あたくしも年をとりました。少しずつ身の丈にあった意見が言えるようになったかしら。本著を読んで改めました。この人、すごい人かも。
いろんな意見があるのを知りつつ、あえて本を出し続けてる。嫌われる勇気じゃないけど、ポリシーをもって茨の道を進む。なかなか出来ることじゃないです。
どうして日本人は、「ひらがな」と「カタカナ」の二種類を作ったか
位置: 434
「ひらがな」は、「かな文学」と言われるようなもの――「和歌」や「物語」を書くために生まれました。万葉がなを使って和歌を書いているうちに、「ごつごつした漢字ばっかりじゃうっとうしい」という気になってきたんでしょうね。使われる漢字だって、「どの音にどの漢字をあてるか」がだいたい決まってきて、その字をくずしているうちに「ひらがな」は生まれたんです。
一方、「カタカナ」の方は違います。「カタカナ」は、「これだけじゃどうにもならないな」と読む人にためいきをつかせる、漢字だらけの漢文を勉強しなきゃならない、大昔の学生たちが考えだした〝記号〟なんです。
大胆な解説。しかし橋本治が言うんだから間違いないんだろうなぁ。
昔の人はカタカナでカンニングをしていた
位置: 462
「読みにくい外国語を読む時にはカタカナを使う」というのは、奈良時代以来の日本人の伝統で、「今の日本語はやたらカタカナばっかりだ」というのも、実は大昔からの伝統なのかもしれません。
カンニングという言葉が重たいし、しかも上記は皮肉たっぷり。
もともと難しい言葉にカタカナを使うんだから、今の横文字ばっかりの日本語もある意味正統であるという。
平安時代に、まだ「ちゃんとした日本語の文章」は存在しない
位置: 633
重要なことは、「兼好法師の時代になって、やっと現代人でも読めるような文章が登場する」です。だから、それ以前の古典――『源氏物語』や『枕草子』が読めなくたって、読んでも意味がわからなくたって、べつに不思議でもなんでもないんです。
大きな救いだね。
清少納言は、漢字がわかる「とんでる女」
位置: 682
紫式部は、清少納言以上に漢詩や漢文にくわしい人です。その彼女が清少納言をいやがるのは、「女が漢字にまつわる知識をふりまわすのはみっともない」という〝美学〟があったからでしょう。
ともかく、「女は漢字の外にいるべきだ」というのが、当時の常識です。
紫式部は、どうやらおじさんメンタリティの持ち主。老害ですね。
だと考えると結構面白い。
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