『消滅世界』感想1 発想の面白さ

逆に言うと終わり方が?って感じですけど。

人工授精で、子供を産むことが常識となった世界。夫婦間の性行為は「近親相姦」とタブー視され、やがて世界から「セックス」も「家族」も消えていく……日本の未来を予言する芥川賞作家の圧倒的衝撃作。

夫婦って家族じゃないですか。だから理屈は合ってるんですよね、家族でセックスするなんて、ってね。そういう違和感を重ねに重ねた、その最後に?って終わりがありました。

位置: 72
物語が進むにつれて、ラピスは一つずつ色を世界に取り戻していった。黄色、紫色、緑色。赤を取り戻したときは、ラピスの身体から出てくる血液にはっとした。
そして物語の中盤、青が世界に取り戻され、空と海が一気に青く染まった。ラピスがやっと青い瞳を取り戻したその場面を見たあとは、涙が止まらなかった。

アニメキャラクターに恋するのが普通の世の中。あたくしもアニメの登場人物を嫁だのなんだの言って、まぁその手の人の一人でしょう、あまり違和感はないかな。

ただこのラピスの物語、面白そうだな。色彩設計とか腕の見せ所だろうな。どろろ、みたいだな。

位置: 164
彼を見ると体内に生まれる「熱い塊」は、身体の中を 這いずり回り、画面を消して布団にもぐってもしばらく続いた。
甘美な痛みに寄生されているような、不可解な感覚だった。甘い痛みは体中を動き回った。胸、背中、首の後ろや、 臍 の下、 爪先 が痛くなることもあった。

それが欲情ということなのか。村田さんにとっては欲情とは熱い塊が体の中を這いずり回ることなのかも。似たような感覚はあります。

位置: 216
私たちの性欲は、無菌室の中で育っていた。  クラスには五、六人、ヒトと恋愛をしている子がいたが、その子たちはその子たち同士でつるんでいて、大半の子は物語の中の人と清潔な恋をしていた。

これがディストピアといえばそうだけど、村田さんはある程度本気でユートピアだと思ってるんじゃないかしら、って勝手に思ってる。

位置: 477
なくてもいいじゃない」  確かに、セックスをする人が減っていると、この前もニュースでやっていた。私たちの世代の 80%がセックスをしないまま成人を迎えようとしているらしい。たとえヒトとヒトが恋人同士になっても、必ずしも性器の結合にこだわるわけではないらしい。必要ないのだ。

快楽と生殖がセットになっているのが動物の業ですね。
これを村田さんは切り離した。若者がセックス離れしているって話はよく聞くけどね。それの誇張なのかしら。

位置: 532
私は呆然とした。
まさか、『家族』に勃起されるときがくるとは。
叫ぼうとしたが、夫の口に 塞がれた。

家族とはセックスしない、というのは動物の本能的に正しい。
だから夫婦は早く違う関係を体得しなければならない。そういうことですね。

村田さんはそこを物語にしているから面白い。

位置: 540
「普通、そういうことは外ですることでしょう。よりによって奥さんと性行為をするなんて」
彼は終始俯いていた。
夫を責め立てる空気の中、私の母だけが、「そういうこともありますよ」と妙に冷静だった。
離婚が成立したあとも、しばらくは恋愛をする気にもなれなかった。 「汚された」私を慰めてくれたのは、子供のころから愛し続けている「あっちの世界」の恋人たちだった。
その恋人たちの存在は、私を浄化してくれた。ヒトとの恋愛は気持ちが悪くてできなくなっていた。

価値観のずれってのはそんなもんだ。そういうこともありますよ。

位置: 566
朔って、いい名前ですね」
「新月の日に生まれたんです。すごく安直な名前で。」

安直でいいんだよ。
新月に生まれたから朔。いいじゃないか。

位置: 607
夫はヒトとしか恋をしない体質のようだが、私と同じくらい恋に落ちやすい。今の恋人は私たちが三年ほど前に結婚してから6人目の恋人で、けれど、未だに恋に慣れることなく苦しいのだという。

これは「男女の愛 → 家族」というプロセスをすっ飛ばし、家族は家族、恋愛対象は恋愛対象と分けた分別ある生き方ですね。

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