『消滅世界』感想2 発想の面白さ

そういえば、古典落語『道具屋』の枕で、「なんでぇ、おとっつぁんだっておっかさんと夫婦じゃねぇか。家族の中で夫婦じゃ笑われら」ってクスグリがありましたね。あの発想だな。

位置: 633
夫は 掠れた声で言った。
「君はやっぱり、世界でただ一人の僕の家族だ。君にだけは絶対に恋をしないでいられるんだから」
「夫婦なんだから、当たり前じゃない。待ってて、すぐに淹れてくるから」
熱い日本茶をマグカップに淹れて持っていき、青ざめた夫に渡した。
「少し落ち着いたみたいだ……ありがとう」
熱いお茶をすすると、夫は強く目を閉じて 呟いた。
「家にいるときだけは、恋をしないでいられる」
私は 頷いた。「そうだね。私も、朔くんとこうやって一緒にいるときは、恋っていうものがこの世にあることを忘れられるよ」と夫の髪の毛をまた軽く撫でた。

これを理想的な夫婦像として捉えられるかどうか、ですね。
あたくしはあんまり難しくない。己にとって最高か、は置いておいて。一つの理想ではあるなと感じます。

位置: 644
「恋は恋、家庭は家庭じゃないか。ちゃんと計画通りに来年になってから人工授精しよう。ごめん、弱音を言って」
夫は小さく笑って、「楽しみだな、子供。子供ができたら、もう恋をしなくてもよくなるかな」と呟いた。

子どもに期待しすぎである。
しかし、それくらい前向きでないと子どもなんか作れないというのも真実である。

位置: 704
私は鞄からプラダのポーチを出し、そのチャック部分についているプラスチックのキーホルダーを取り外した。

「この主人公、プラダとか持ってるんだ」ってのがあたくしの素直な感想。あんまりブランド云々が好きじゃないって勝手に思っていたので。

位置: 918
「……ありがとう」  夫は小さく笑った。 「家の外は、僕の恋と性欲で汚れている。家の中でだけは清潔な僕でいられるんだ」

位置: 933
「恋愛なんて下半身の娯楽だって、聞いたことがあるよ。確かにそうだよな。やっぱり人生で一番大切なのは、家族だ

そういう家庭もありだよね。読んでいるうちにそう思えてくるよ。

位置: 940
恋愛という宗教に苦しめられている私たちは、今度は家族という宗教に救われようとしている。本当に身体ごと洗脳されたら、やっと「恋愛」を忘れられるような気がする

人間の大半はなにかの価値観に支配されなくてはいきていけないものかもしれません。事実、あたくしも恋愛や家族を信じずには生きてこれていませんからね。

だからってそういう盲目的な信じ方をするのは本当に一部の限られた部分だけにしたいですな。

位置: 1,543
恋は、変態であることを引き受ける勇気のことを言う

村田さんは、生きづらい経験をされたんでしょうな。恋愛に対する根底からの不信感が滲み出ています。

位置: 2,440
あ、また世界がグラデーションしていく、と私は思う。
その「クリーンルーム」がどういう仕組みなのかはわからないが、「自慰」というものもこれからは消えていくのかもしれない。
便利になるな、と思っている自分がいる。私たちの性は進化し続けていて、それにしっくりくるように世界も変わり続ける。そのことを、受け入れている自分がいた。

『ピーターグリル』じゃないけどさ。実際性欲に振り回されて難渋することって結構ありますからね。今だってかつてほどじゃないけど、支配されそうになるときあります。射精に支配されなくなったら、もっと生きやすいんだろうな。

そして最後、急にシリアルホラーになる。なんで?

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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