引き続き『今夜、すべてのバーで』です。
位置: 508
「連続飲酒」とは、普通の酒飲みが、ある日をさかいに線が切れたように朝昼晩、一週間二週間と飲み続ける現象をいう。
そんなことあるんか。あたくしはシラフじゃないと出来ないことも多いので、あんまり経験したこと無いな、この状態。
位置: 512
ここで特筆して区別しておかねばならないのは、「渇酒症」だ。 この場合、ある時期をさかいに、急に大量の酒を連続飲酒し始める。それこそ浴びるように飲み続ける。そうして、病院にかつぎ込まれ、集中治療を受けて退院する。するともうケロリとして、酒に見向きもしない。元来、酒が好きだというわけではないらしい。何ヵ月でも、ことによると一年くらいは平気で一滴もアルコールを口にしない。 ところが、ある時期がくると、またダムが 決壊 したかのごとく、底なしにアルコールを飲み始める。倒れて入院、退院ということになる。これが「渇酒症」で、アル中の中でもこのタイプは比較的少い。
聞いたこと無いなー。アル中の自覚がないからか、AA(アルコホーリクス・アノニマス)とかにも興味ないし、渇酒症も知らなかった。お酒は好きだけど、いや、好きだからか。あんまりよく分からん。
位置: 524
アル中になるのは、酒を「道具」として考える人間だ。おれもまさにそうだった。この世からどこか別の所へ運ばれていくためのツール、薬理としてのアルコールを選んだ人間がアル中になる。
道具、ねぇ。道具といえば道具だけど、たぶんここで言われている道具のニュアンスと、あたくしにとっての酒の「道具」は違うような気がする。あたくしも、酒は道具で、憂さ晴らしであったりハイになる薬、ソーシャルドラッグとして見做していますが。
位置: 1,363
中毒におちいった原因を自分の中で分析するのはけっこうだが、〝みじめだから中毒になりました〟というのを 他人 さまに泣き言のように言ったって、それは通らない。それでは、みじめでなおかつ中毒にならない人に申し訳がたたない。〝私のことをわかってくれ〟という権利など、この世の誰にもないのだ。
哀しいけど、そうなのよね。わかってほしい!と叫べるのは家族に対してか。家族だって分かってあげる義務はなかろうしな。
位置: 1,475
アル中の要因は、あり余る「時間」だ。国の保障が行き届いていることがかえって皮肉な結果をもたらしていることになる。
「暇だし、酒飲むか」は確かに危険。あたくしもある時から、一人では夜しか飲まないように心がけてる。
位置: 1,477
「教養」のない人間には酒を飲むことくらいしか残されていない。 「教養」とは学歴のことではなく、「一人で時間をつぶせる技術」のことでもある。
ある意味そうかもね。酒を飲むことしか暇をつぶせない人、いるよね。教養ある人でも酒が手放せない人、たくさんいるけどね。
位置: 1,689
この公園には、中央に大きな噴水があった。公園で夜を過ごす浮浪者もフーテンも酔っ払いも家出少年も、なぜかこの噴水を中心に、同心円上に分散して寝るのだった。独りでは淋しいが、かといって見知らぬ浮浪者と寄り添って寝たくはない。そこで、噴水を中心にして等距離に散らばった、一晩だけのファミリーを形作るのだ。
直線上になれば鴨川等間隔ねぎまの法則、だ。
位置: 1,795
「生首があって、女がいて。サロメの絵ですか」 「そう。ギュスターブ・モローの描いたサロメよ。私、十八のときに絵画展でこれの本物を見たのよ。そしたら金縛りにあって動けなくなっちゃって。それから、私はありとあらゆる作家の描いたサロメの絵を集めてるの。だから私を知ってる人は、みんな私のことを〝サロメ〟って呼ぶのよ」
みんな私のことを〇〇と呼ぶのよ、という人間を信用しちゃいけない。
位置: 1,893
「一宿一飯 のお礼にしちゃ、かなりの仕打ちだな」 パックの牛乳をごくごく飲みながら舗道を歩く不二雄におれは言った。不二雄は、のどもとに一本流れたミルクの糸を袖でふきながら答えた。 「虫酸 が走るんだよ。あの手の女は。ハンス・ベルメールの画集集めて、バタイユばっかり読んでるんだぞ。
虫唾は走る。けど、かかわり合いになるこた、ない。無視する技術が人間には必要だ。
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