『師匠、御乱心!』感想② 圓丈師匠の執念たるや #御乱心 #圓丈 #圓生 #圓楽

とにかく執念を感じます。

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「ぬうちゃん! そういうのは敗北主義というんだ!」  全く耳慣れない言葉だ。敗北主義、ことによると今、彼が考えついたのかも知れない。 「いいかい! 何かやる時に負けるコトを前提にやるなんてバカげてる。勝つことだけを考えて、それに全力を尽くせばいいんだ。ところがインテリって奴は、いつも〝負けたらどうしよう〟と考えてしまう。それは敗北主義なんだ。そんなコトでは、勝てるモノも勝てなくなってしまう。それはインテリの弱さなんだ。ぬうちゃん、そんなことじゃ何をやったって成功なんてしない!」と言い返して来た。

とにかく圓楽憎し。それだけのことをされてきた、ということなんでしょうが、それにしても凄い執念。

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二人の話は止まるところを知らなかった。その間円窓は、二人の顔を交互に見ながら頷く専門の頷き役!  俺は昔の円窓を想い出してた。昔はこうじゃなかった。彼は、師の家でも兄弟弟子と話もせずに黙々とケイコをしていた。周りの雑音には一切耳を貸さず、全くのマイペース、彼の目はいつも遠くを見つめていた。そんな男らしい円窓が好きだった。  それが、真打になり、円楽の星企画へ入った頃から少しずつ変わって来たが、俺は、円窓に昔のイメージを抱き続けた。だが今ここにいるのは、新協会の幹部というエサを見せられてスッカリ飼い 馴らされ、頷くだけの円窓だ。

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三人の顔は一様に満足げで、一様にニコやかな顔つきをしていた。だが円生は、理想の協会を! 円楽は、〝もうすぐ俺の天下に!〟、円窓は、〝とにかく幹部!〟と全く同床異夢だった。

兄弟子・円窓にも容赦ない。とにかく圓生の気持ちを理解しているのはオレだ!という信念。すごい。

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人間、何かの決断を迫られた時、最後に基準になるのは、案外好きか、嫌いかという単純なトコロへ落ち着きそうだ。  現に俺が落語協会に戻りたい最大の理由は、円楽とはいたくない! これだけだ。

単純明快。長く社会人やってると、この原理で動いているにもかかわらずそう見せない仕組みが多すぎて辟易します。嫌いなものを嫌いと言わないのが大人、みたいな風潮、ありますからね。

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今回、新協会成立のキャスティングボートを握っているのが三平、馬生の二人だと思う。この二人がとれれば新協会の完勝だ。だが三平は既に残留を決意してる。  何故、三平は残留したのか。その理由の一つは彼自身の危険な方には近寄るなという生き方が影響していたが、もう一つ忘れてならないのは円生が三平を全く評価していなかったことだ。円生は、 「三平の芸は草花だ。どんなにきれいに見えても一年たてば枯れてしまう。そこへいくと古典は松の木だ。見てくれは悪いが決して枯れることはない」とよく言っていた。

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「そうですか~ァ? でも僕は、小さんの弟子だから言う訳じゃありませんけど、ウチの師匠は本当に心が広いんですヨ。  だって普通なら、自分の協会員がどんどん引っこ抜かれてたら〝一度、新協会加入者は以後、如何なる場合も落語協会は受け入れない〟なんて通告を出すとか、いろいろと協会員を締めつけにかかるモノですが、師匠は何もしない。ただ馬生師匠を副会長にさせただけなんです。  あとは全て受けて立つ。横綱相撲ですヨ。こりゃ、本当に偉いと思いますねェ」

また、本著を読んで改めてわかるのは、圓生・小さんの器のデカさ。無私、と言いますか、とにかく人間の大きさが違う。縄張り争いでうごく有象無象とは違うのだ!という圓丈師匠の尊敬の念・信念を感じます。

芸を生でみることは出来なかったけど、すごいもんだ。見てみたかったな。
稿を改めます。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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