間違いない。
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薄紫の香腺液の結晶を、澄んだ水に落とす。甘酸っぱく、すがすがしい香りがひろがり、それを一口ふくむと、口の中で冷たい玉がはじけるような・・・・・・。アルコールにとりつかれた男・小島容(いるる)が往き来する、幻覚の世界と妙に覚めた日常そして周囲の個性的な人々を描いた傑作長篇小説。吉川英治文学新人賞受賞作。
はたして吉川英治文学なのかどうか、よくわからないけど、とにかく読みやすい。らもさんを読むのは『ガダラの豚』と『寝ずの番』以来。相変わらず読みやすい。
ある中の男の闘病記のフィクションというのかな、簡単に言えば。真に迫ったアル中描写が生々しくて読む人を選びそうです。あたくしは……お酒は好きだけど、ここまでには成れないかな。ある程度のアル中ではありますが、「所謂」のレベルではないと思っています。あくまで軽度。という自覚。
位置: 65
水蜜桃 の頰。白目の色が湖底のように 蒼い。
冒頭の記述。なんだかきれいだったので抜粋。
位置: 192
肝臓という奴は〝沈黙の臓器〟って言われてるくらい、めったに悲鳴をあげない内臓なんだ。あんたみたいに自覚症状が出て入院してくるってことは、よっぽどの事態だってことだ
傷んでからじゃ遅い、ってこと。まぁ、あたくしもかなり子供の時から「肝臓が悪い」と言われてますから。飲んでなかったときから。気をつけなければなりません。休肝日をつくるように努めています。
位置: 369
夜中の一時近くなって、やっと眠気の 尻 っ 尾 をつかんだような気がした。それを慎重にたぐり寄せていく。
何となく分かるんだよなー、この眠気の表現。尾っぽを掴む、ってのがキャッチーでいいよね。
位置: 441
横紙破りの悪童
あまり使わない表現になりましたが
無理を通そうとする人のこと、だそうな。へー。
位置: 442
立居振舞、ケンカの売り買い、飲んで倒れての寝言まで、在り方自体が詩作品のようにそげた美しさを 孕んでいた。これを一言で説明するのはむずかしい。天童寺は、彼の生そのものが、いっさいの感傷やレトリックを 剝落 させた、硬質の「詩」であるような男なのだった。
こういう詩的でソリッドな表現をさらっとする一方で、ドロドロのアル中描写がある。こういうのがこの人の筆の魅力かなーとは思いますね。
位置: 469
資料の中には、禁断症状の激しい幻覚に 苛まれ、包丁を持って家族を追いかけまわすアル中や、体中を虫が這っているというので俗にいう「虫取り動作」を繰り返す、独房の中のアル中がいた。 これらの人々を眺める安心感と、こういう「ひとでなしのアル中」どもが、河ひとつ隔てた向こう側にいて、おれはまだこっち側にいるその楽観とを得るために、おれは次から次へとアルコール中毒に関する資料を集めた。ついには「アル中の本」を 肴 にしてウィスキーをあおる、というのがおれの日課にさえなった。
思わず笑ってしまいました。アル中の本を肴に呑む。良いじゃないですか。こういうことってあるよね。虫取り動作って本当にあるんだそうな。こええな。そこまで行きたくないな……。休肝日、増やそうかな。
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