これは“21世紀のアクロイド”と呼んでもいいんじゃないかしら。
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おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。
私見としては、ミステリと呼ばれることには違和感はあるものの、概ね面白かったですね。作家とガチンコの知恵比べをしたい方にはオススメできないかしら。
あくまで謎探求のスリルが本旨であって、謎解きに重きをおくと噴飯ものかも。
物語は刑事とアレックスの両方の視点で、章を順番に分けて語られるタイプ。最近流行りなのは日本だけではないようですね。
独特でリズミカルな文体と、どっしりとした物語性、そして登場人物の厚み。
どれも一級品でしたが、あとは好みの問題。
残虐な描写もあるし、読後感が爽快とも言い切れない。
なので、好き嫌いはあるでしょうね。あたくしはわりと好みでした。作者が、何だかんだいって登場人物を愛のある目で観ているような気がしまして、ね。
この作品、国内外とわずに6冠と言われるほど、評価が高いらしいのです。文春ミステリー海外部門1位、ハヤカワミステリマガジンでも一人勝ち、文庫翻訳ミステリーでも1位。すごいですね。
そのせいか、amazonレビューは妙に荒れてますが、まぁ、ネットってそういうもんじゃないですか。
表紙からして、手に取りづらいですな。
カミーユは非暴力主義者だが、暴言は吐く。めったにどならないものの、腹を立てることはしばしばだ。もともと頑固なところに、年齢とやもめ暮らしが重なって怒りっぽくなってきた。いや、要するに元来こらえ性がないということだろう。イレーヌにもよく、「どうしていつも怒ってるの?」と言われた。そういうときは少し高いところからものごとを見て──百四十五センチなりの高いところから──驚きとともに答える。「ほんとだ……。怒る理由なんかないな……」。節度を重んじるかと思えば怒りっぽく、柔軟な駆け引きが得意かと思えば暴言も吐く。だから初対面の人間はカミーユを理解できないし、好感をもつこともない。その上性格も明るくはないので、とっつきが悪い。
at location 225
主人公が145cmしかないうっすらハゲの男やもめ。
硬派でいいじゃないですか。探偵じゃないけど、探偵っぽい。神津京介よかよっぽど主体的に読める。
誰とでもつながりをもとうとする計算ずくの態度にむしずが走った。もともと社交的だったところに、年齢とともに口達者に磨きがかかり、今や保護者然とした尊大さまで加わったというところだろうか。人類の半分の友であり、残りの半分の母親であると言わんばかりのずうずうしさに、アレックスは苛立ちさえ覚えた。 その顔を見れば、かつての美女がそのままでいたいと望んだためにすべてを台無しにしたのだとわかる。美容整形は時に老いを醜くする。その顔は、どこがどうと特定するのは難しいが、なんとなく全体がずれてしまっていて、顔の体裁をとどめようとしながらも顔としてのバランスを失っている。
at location 3100
アレックスの無事を祈り、アレックスに怒りを覚え、アレックスに恐怖して、最後にアレックスのために泣ける。
タイトルに偽りなし、その女、アレックス。
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