『噺は生きている』トークライブ 溜飲が下がるのなんの

広瀬和生さんのデータの蓄積は圧倒的です。

同じ『芝浜』は一つとしてない。
志ん生、文楽、圓生ら昭和の名人から、志ん朝、談志、さらには小三治、談春、一之輔など現役トップの落語家まで、彼らはどう演目を分析し、アレンジを加え、ときに解体もしながら、演じてきたのか。
演目の進化から落語の〈本質〉に迫る、画期的落語評論。

落語ファンなら誰もが気になるあのフレーズを論理的に解き明かしてくれる名著……らしいです。まだ読んでないので本格的なことは言えません。
早く電子書籍版出ないかな。

トークショーで特に面白かったのは、富の噺。
『水屋の富』や『富久』で出てくる神社の境内での富の会話で、
「おい、お前、千両当たったらどうする?」
「オレは家買って庭つくって池掘って日本酒入れて、◯◯を持って飛び込んでジャブジャブゴクゴク泳ぎながら飲むのよ」というときの◯◯は何かというもの。

ちょうどこの間、志の輔師匠の『水屋の富』では枝豆でした。
志の輔師匠が枝豆好きだからかな、と思っていたら談志がそうだったそうです。小さんもそうなのかしら。
志ん朝はタクワンですよね。いくらなんでも、タクワンだけでもって浴びるほど飲むのは辛くはないか、と思ったもんです。
加えて、先代の馬生師匠はスルメだったんだとか。「さもありなん」という印象です。馬生師匠ならスルメがぴったり。古今亭でもここで違うんですな。

ことほど左様に、どこのフレーズがどこにルーツがあるのか、どこを掘り下げて作品をどう演出しているのか、そのあたりについて分かりやすく書かれている……そうです。あー、電子書籍版まで待ちきれん。紙でも買っちゃおうかな、読みたい。

広瀬さんの噺はとにかく背景にあるデータが凄まじい。もちろん、それが正確で、また、的を射ているから舌を巻きます。
もっとこの人の落語の話が聞きたいと思わせる、素晴らしいトークライブでした。

タツオボーイ的には、ゲストで出ていたサンキュータツオさんがいつもより控えめな感じがするのも見どころでした。広瀬和生さんという圧倒的な怪物を前に、互角にセッションするというよりは、演出に徹して盛り上げていたように見受けます。
やはり恐るべきは広瀬さん、ってことかしら。

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