飴村行著『粘膜人間』感想 グッチャネ!

どこかユーモラスなんですよ。

「弟を殺そう」――身長195cm、体重105kgという異形な巨体を持つ小学生の雷太。その暴力に脅える長兄の利一と次兄の祐二は、弟の殺害を計画した。だが圧倒的な体力差に為すすべもない二人は、父親までも蹂躙されるにいたり、村のはずれに棲む“ある男たち”に依頼することにした。グロテスクな容貌を持つ彼らは何者なのか? そして待ち受ける凄絶な運命とは……。第15回日本ホラー小説大賞長編賞を受賞した衝撃の問題作。

ホラーなんですけど、言葉がどこかユーモラスで、気持ち悪いんだけどちょっと笑っちゃう。

位置: 130
「そんなにびびることないだろう。安心しろ、俺がしこって欲しいのはお前じゃなくてこっちの奴だ」
ベカやんが祐二に視線を向けた。

冒頭の手淫強要シーン。もう出だしからグロがひどい。しかし、どこかユーモラス。ベカやんという名前もまたいい。しこがひらがななのがまた、いい。

位置:313
「グッチャネって何だ?」
「女の股ぐら泉に男のマラボウを入れてソクソクすることだっ」

位置: 348
「何が欲しい?」
利一が訊いた。
「村の女が欲しい」
「女っ?」
「そうだ、おめぇらぐらいの若い女だ。その女と気が済むまでグッチャネがしてぇ」
「でも、それは、その」
利一は動揺してしどろもどろになった。
「どうした、何で困った顔すんだ? 村の女は俺とグッチャネをしたがってんだろ? 声を掛ければどんな女でも俺のとこに来んじゃねえのか?」

背徳感がすごい。こんなん読んでることがバレたら大変だ。
しかし面白い。自分で組み立てた嘘で自分の首が絞められるの、最高に面白いね。

位置: 453
「どうだった?」
「そうだな、ぎりぎり及第点だ。丙種合格ってとこだ」
モモ太は 鷹揚 な声で答えた。しかしその言葉とは裏腹に、 股間 の陰茎は勢い良く 屹立 していた。ベカやん同様あちこちに太い血管が浮き出し、 藍色の亀頭の先は透明な液体でしとどに 濡れていた。清美をかなり気に入ったようだった

しとどに濡れていた、って表現もまた、いいよね。
屹立しているカッパもしょうもなくて、いい。

位置: 821
それは心臓のように激しく脈打っていた。これがもうすぐ清美の中に入るのかと思うと興奮のあまり 眩暈 がした。
祐二は森の中に消えていくモモ太の後ろ姿を見つめながら、ポケットの中の右手をそっと上下させた。

まぁ、この物語、出てくる人全員しょうもないんですけど。
祐二も相当にしょうもない。そのしょうもなさが妙に可笑しい。

位置: 1,375
「出た、 蕎麦 が出たぞっ」
傍らで撮影していた弐番の男が嬉々として叫んだ。激痛はいつの間にか全身を覆っていた。頭の 天辺 から 爪先 までがどくどくと激しく脈打っており、もうどこが痛いのか区別がつかなかった。叫ぶことも 儘 ならなくなった清美は、泣きながら頭を左右に振る以外なす 術 がなかった。胃の内部にゆっくりと刃先が入ってきた。清美は再び強い吐き気を覚え 嘔吐 した。
「また蕎麦が出た、また蕎麦が出た」

グロのためのグロ。蕎麦がこうやって生きるか。
すごい伏線。単純だけど、効果的。

位置: 2,521
かなりの激痛らしく注射器を床に落とし右目を押さえてうずくまった。
「清水っ、どうしたっ? 何があったっ?」
状況を把握できない少佐が叫んだ。少尉はうずくまったまま 苦悶 の声を上げるだけだった。少佐が慌てて腰の 拳銃 を抜いた瞬間モモ太が動いた。 凄まじい早さで跳躍し少佐の上半身に飛びついた。少佐は拳銃を振り上げ何かを叫んだ。その口の中へモモ太は右手を突き入れた。少佐が目を 剝 いて大きく 呻いた。モモ太は口内から勢いよく舌を引きずり出した。紅色のぶよついたそれは二十センチ近くもあった。

うげぇ。気持ち悪い。
このカッパって存在が、また絶妙に気持ち悪くていい。
バカ力で単細胞で、とても可笑しい。

位置: 2,553
「おめぇ、顔中ぶん殴られて金玉まで 潰されたのに全然平気だな」
「ああ、全然平気だ。テッケンもツブシバサミもきつかったけど、全部終っちまったことだから今じゃいい思い出だ。金玉もあと一個残ってるし何も問題はねぇ」
「兵隊を殺した時はどんな感じだった?」
「いい感じだった。 溜まってたクソがスポーンとひり出るぐれぇいい感じだった。鉄砲がねぇと絶対 敵 わねぇと思ってたから 嬉しくてしょうがねぇ」

この単細胞っぷり。最高。
読めば読むほどカッパが好きになる。関わり合いにはなりたくないが。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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