『おせん』の人、という印象しかなかったのですが、これも大変な名著でありんした。
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『おせん』の時から感じる、圧倒的な画力と色気。
それが飯の噺に終着しているところがまた、何とも素敵。
根底にあるメシのスタンスとして、「素人が作るものは逆立ちしたってプロにはかなわない。けれど、ちょいとした手間で自分の味が出せて、なおかつ美味いんだとしたら、それを”当たり前の贅沢”としようじゃないの」的なものがあります。
それ自体は大変ステキなお考えなんですけれどもね。
蕎麦は冷凍、魚はスーパー、だけど
使っている品物自体はそんなに大層なものではないんです。
蕎麦は冷凍のもの、魚はスーパーで買ってきたもの。
それは贅沢はしない。
けれど、それを手間暇かけて天日干しにしたり、麺つゆを自分で作ってみたり。
そういう手間を惜しまずに料理をすれば、とびきりの贅沢ですよね。
なんという嫌味
と、まぁ、言っていることはもっともで、しかも「作り慣れている感」があるからぐうの音もでない。
けれど、これを「当たり前」と出来ることの嫌味というのもあります。
そりゃ、手間暇かけりゃ美味いですよ。
ちょっとしたものでも、出来りゃね。
出来ないから羨ましい、そして人には出来ないから贅沢なんですな。
わざわざ包丁を研いで、麺つゆを自家製して、自ら畑へ赴いて掘って。
そんなこと、個人にとっちゃ当たり前かもしれませんが、常識とされると立つ瀬がないんです。
考えると、「あたりまえのぜいたく」という言葉は「痛くない腹痛」のようなもんで、それ自体に意味が破綻しているのかもしれません。
あたりまえだったら贅沢じゃないじゃんか。そういうことですな。
しっかし絵が綺麗で美味そう
『おせん』のときから飛び抜けて絵が上手でしたが、メシの絵を描かせても一流ですね。
はぁ。腹減った。
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