どっちも風呂敷広げっぱなし、ってだけなんですけどね。
その風呂敷の広げ方が実に上手い。
『羊をめぐる冒険』から4年、激しく雪の降りしきる札幌の街から「僕」の新しい冒険が始まる。奇妙で複雑なダンス・ステップを踏みながら「僕」はその暗く危険な運命の迷路をすり抜けていく。70年代の魂の遍歴を辿った著者が80年代を舞台に、新たな価値を求めて闇と光の交錯を鮮やかに描きあげた話題作。
とにかく緩急が自在。
日常パートをしばらく続けておいて、ワクワクさせたと思ったら急に不穏な影、死体とか殺人とか、を打ち込む。その手際の良さは卓越してる。
まるでミステリーのような物語の運び方をしておきながら、しかしながら、謎がまるで解かれない。これがあたくしにはイラッとする。
物語なら、もう少し、起承転結というかさ、謎解きとかそういうのがあっていいでしょう。まるでエヴァのTV版ですよ。これだと好き/嫌いの判別はし辛い。
あと圧倒的な豊かさ、余裕のようなものを感じて、正直うらやましいとは思う。女にゃ不自由しない、仕事も有り余るほどある。時間もある、コネもある。車もある。
今の若者にゃ嫌味になるんじゃないかな。あたくしはおじさんですが、ちょっと嫉妬しかけました。男の嫉妬ほど見にくいものはないけどね。
部屋の死体はなんだったのか、五反田くんは本当にキキを殺したのか、羊男とはなんだったのか。
謎は未解決のまま。思索は出来るのかもしれないけど、答えがぼんやりとしすぎて面白みがない。
そんな印象でした。
最新記事 by 写楽斎ジョニー (全て見る)
- 武田綾乃著『飛び立つ君の背を見上げる』感想 俺達の夏紀! - 2024年4月19日
- モーリス・ルブラン著『奇岩城』 俺のホームズになにしてくれてんだ - 2024年4月9日
- シアン・ヘダー監督『コーダ あいのうた』感想 - 2024年3月31日