『幼年期の終わり』 SFの古典だけど、それ以上ではないかな

SFの最高峰

アーサー・C・クラークの伝説的著作だそうです。
SF史上に残る大傑作なんだとか。

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確かに、あたくしの好きなディストピア感も豊富であり、噂によると「宇宙人の侵略のプロトタイプ」を創りだした作品だとも言われているんだとか。
円盤がやってきて、地球人を試したり対話したり、謎に包まれた宇宙人のプロトタイプ。

これを読むと、映画「インデペンデンス・デイ」とか「猿の惑星」とかってのは、この作品に影響受けまくってるなぁと素直に感心しますね。
猿の惑星なんて、ほとんどこの作品の登場人物「ジャン」の物語といって過言じゃないでしょう。

謎もいいですね。
突然宇宙人がやってきて、圧倒的な技術を見せつける。
しかし、その圧倒的な技術をつかって人間を征服しようとする感じではない。なぜ?

このなぜ?のところに、300ページかけて迫るストーリーは読ませますね。
圧倒的な技術を見せつけられた地球人は、反抗心を失い、平和になる。そして、宇宙開発への興味を失う。
このあたりの説明的な展開は、溜飲が下がります。なるほど、そうなるよね、という具合に。

このSFというジャンルは、ことさらこの「溜飲が下がるかどうか」というのが大切ですよね。
根も葉もない事を読者に提示するジャンルですから、それだけに読者をモヤモヤさせないという技術は必要ですな。

「幼年期の終わり」については、そのへんの腕は見事としか言い様がないです。

とはいえ、あまり好きなタイプの本じゃないかも

このジャンルの本としては満点なんでしょうけどね。
残念ながら、あたくしにゃ合わないかな。

想像力がないのかしら、あまり風景描写が心に入ってこなかったんです。
円盤がこう動いた、惑星に地殻変動が起こった、超能力で天変地異が起こりつつある。
そういった描写が丁寧に描かれているんですけど、悔しいかな、すっと頭のなかに生まれない。

荒唐無稽を楽しむという、ある意味で立川流のイリュージョンだと言えるかもしれません。
だとすると分からないことがすごく残念だぞ。いや、残念なんですよ。わかりたい。

わかりたいけど、なかなかね。
脳みそが追いつかないのだ。悔しいかな、悔しいかな。

なるほど、そういう『幼年期』ね

下げもスッキリしていて良かった。
タイトルが最後まで謎になっていて、終いまで呼んで「あぁ、なるほど」となる。
いい小説ですね。こういう読書体験が、今後もしたいものです。